米国債ベーシス取引の規制強化ならクレジット市場を圧迫も-UBS
(ブルームバーグ): ヘッジファンドが多用する米国債のベーシストレードを規制当局が取り締まることによって、短期のクレジット市場に「大きな」打撃を与える可能性がある。UBSグループのストラテジストがこのよう見方を示した。
米国債先物と現物債の価格差を利用するベーシストレードは、2020年のパンデミック発生時の市場混乱に一役買ったことから、世界の規制当局の監視の目にさらされている。
UBSのアナリスト、マイケル・クロハティー、マシュー・ミッシュ両氏によれば、例えば規制当局がレバレッジに上限を設けたなどの理由でヘッジファンドがベーシストレードから撤退することになれば、米国債先物の相対的な割高感が増すことになる。
これは運用会社にとっては問題になる。運用会社は米国債の代わりに先物を買うことで現金を解放し社債に振り向けている。ベーシストレードが巻き戻されれ先物が割高になれば、社債に代わって米国債現物を購入することが必要になり、短期のクレジット市場に「重大な影響」を及ぼすと、UBSは警告している。
「この取引の反対側に立つヘッジファンドにとってのコスト上昇は、運用会社のコストを上昇させ得る。最終的に、コストが高くなり過ぎれば運用会社は先物取引とクレジット取引の両方を解消しようとするだろう」と、ストラテジストらはリポートで警告した。
ベーシストレードは多額の借り入れを伴うため、予期せぬ出来事が市場のボラティリティーにつながると、ファンドが一斉に保有資産の売却を余儀なくされる可能性がある。国際通貨基金(IMF)は今月、少数のヘッジファンドが米国債先物の大規模なショートポジションを積み上げており、市場に負荷がかかった場合に広範な金融システムを不安定化させる恐れがあると警告した。
UBSのストラテジストらはベーシストレードを優先度の高いシステミックリスクとは考えていないものの、ヘッジファンドのポジショニングに対する規制当局の取り締まりで、この戦略のコストが上昇する可能性があるとみている。