農業の人手不足と、障害のある人の就労先不足を解決する「農福連携」。その成果や意義とは?
農福連携を進めるためにできること
Q.再び、農水省の渡邉さんに伺います。障害があっても就労できる場所が増える社会になるために、私たち一人一人ができることはどんなことでしょうか? 渡邉:この農福連携の取り組みは、まだそれほど消費者の皆さんに知られていないと思います。農福連携の農産物や加工品は、障害のある人の手により一つ一つ丁寧に作られている場合が多く、これらの商品を買っていただくことでその売り上げが直接障害のある人の賃金(工賃)に反映されます。 農福連携の素晴らしい商品を広く消費者の皆さまの手に取っていただけるよう、ノウフクJAS(障害者が生産工程に携わった食品、および観賞用の植物の日本農林規格)による商品のプロモーションも行っています。 農福連携で作られたものを取り扱っているオンラインショップや、マルシェなどを通して、障害のある方が育てた農作物や作った加工品をぜひ手に取ってみてください。農福連携を知って、商品を買っていただくことで、障害のある方の応援につながるということを知ってもらえたらと思いますし、私たち行政も認知度を上げることに力を入れていきたいと考えています。 Q.青葉仁会では、どうお考えでしょうか? 井西:農業と福祉の連携を活かし、さまざまな分野がつながり合うことで、障害のある方々はもちろん、多くの人が活躍できる機会が増えると思います。 実際、私どもでは他の福祉法人や企業、行政、教育機関、また地域との連携を進めることで、多くの商品やサービスが生み出されています。その過程でそれぞれの役割や働きを評価し、たたえ合うことが、連携の強化と広がりの重要な部分と感じます。 青葉仁会の施設を利用する人の中には、作業中もこだわり行動でスムーズに動けなかったり、一般的には問題と捉えられる行動をする方がいます。でもそういった人のことを、周囲の利用者さんや職員が業務の役割分担するなどして、作業チームの中に受け入れていくんです。 また、レストランでレジやホールの仕事をされている利用者さんが、上手くできなかったり失敗したりしても、一生懸命に働く姿を見たお客さんは、怒ることなく見守ってくれるんです。そういう姿を見ていると、寛容さが人々の活躍場所を増やし、さらに生きやすさにもつながっているということを、利用者の方から教えてもらっているような気がするんです。 農福連携を進めるためには、人々が活躍できる場所づくりと、お互いにたたえ合うという循環が必要なのだと感じます。
編集後記
農福連携は、別の分野の課題を掛け合わせることでイノベーションが生まれていく、共生社会の理想的な姿だと感じました。その取り組みについては、ノウフク・プロジェクトのページで詳しく知ることができます。 誰もが自分の強みを活かして活躍していく社会を実現するための手段として、農福連携に関心を持ち、そこから生まれた製品を手にしてもらう。そうすれば、きっとその意義を体で感じることができるのではないでしょうか。
日本財団ジャーナル編集部