インド駐在から帰国後、日本人上司に感じた衝撃的な「逆カルチャーショック」…国際会議では「最も優秀とみなされる人材」
帰国後の逆カルチャーショック
加えて、日本に帰国後に逆カルチャーショックを受けることも、少なくない人が経験することです。日本を出発する前までは、当たり前だったことが、海外での経験を経て、「この日本の仕組みはどうなの?」「日本人の同調圧力、強すぎないか??」「〇〇(国)では、このくらいはっきり言わないと伝わらなかったんだけど、言い過ぎた!?」などなど、日本の社会に再適応するのに時間がかかることだってあり得ます。 筆者がインドから帰国する前、当時のJICA事務所長から頂いたアドバイスがあります。こんな趣旨でした。 「インド駐在中、尾﨑君はよく頑張ってくれた。国際会議などでは『日本人にしゃべらせ、インド人に黙って話を聞かせられる議長は世界で一番優秀だ』と言われるくらい、日本とインドでは発言への姿勢が違う。この駐在期間で尾﨑君が年齢・役割相応の存在感を発揮してくれたということは、既にインド人仕様のコミュニケーションに染まってしまっているということだ。 今のままの調子で日本に帰ってしゃべっちゃうと、日本で暮らす日本人の間では必ず『しゃべりすぎ』になるよ。しばらくは物足りないかもしれないが、帰国した後はもう一度初心に戻って、上司・先輩のいうことを黙って聞くことをおススメする。半年くらいは自分がしゃべりたいと思うことの3割ぐらいでとどめておこう。そうすることで、早く日本の執務環境に適応できるだろうし、尾﨑君の意見をちゃんと聞いてもらう土台作りにもなるはずだ」 このアドバイスがなければ帰国後、日本の本部に戻ってからも上司や先輩に後先考えずに意見具申・反論を繰り返していたかもしれません。その結果、「仕事は半人前なのに、口ばっかり達者な奴だな」と酷評される可能性もあった中で、所長のこのアドバイスは大変貴重でした。 皆さんも海外で長く生活した後は、自覚しているか、していないかはさておき、現地の当たり前に染まってしまっているかもしれません。現地に適応するための取り組みですから現地の当たり前を受け入れ、実践することはけっして悪いことではないのです。しかしながら、その状態でそのまま日本に戻って、外国流がずっと通用するわけではないのです。 ただし、深刻にとらえすぎる必要はありません。海外の生活に一度、二度と適応できた皆さんであれば、当然日本にも再適応することができます。大切なのは留学、異文化体験には精神面の浮き沈みがつきものだ、ということを頭で理解しておくこと、そして困った時に相談できる窓口を複数知っておくことです。 尾﨑 由博 海外安全管理本部/海外安全.jp代表
尾﨑 由博