「あぶデカ」舘ひろし、なぜいつまでもカッコいいのか 貫く孤高のダンディズム
連載《ニュースなルック》
イケてるオジさんを略して「イケオジ」というが、それはそのままこの人のことを指す。舘ひろし氏だ。さすがに誰も異論はないだろう。舘ひろしと比べられたら世のオジさんたちはもはや泣くしかない。♪泣かないで~。 【写真はこちら】8年ぶりに帰ってきた「ダンディー鷹山」と「セクシーユウジ」を見る スポーツウエアやスーツの着こなしもチェック! 舘ひろしと聞いて真っ先に思い浮かぶのが「あぶデカ」こと『あぶない刑事』という世代は多い。1986年にテレビ放映が始まり、これまで何度も続編や映画もシリーズ化されてきた、刑事ドラマを初めてファッショナブルに描いて人気を博した伝説のドラマだ。2024年5月には最新作の映画『帰ってきた あぶない刑事』も公開され、昭和、平成、令和と、時代も世代も跨(また)いで今もなおファンが多くおり、根強い人気がある。 あぶデカファンがハマる魅力には、横浜を舞台にお約束のカーアクションや、登場人物の型破りなキャラ設定もある。が、やはりなんといっても、一番の見どころは、舘ひろし氏が演じる「ダンディー鷹山」こと鷹山敏樹と柴田恭兵氏が演じる「セクシーユージ」こと大下勇次の、タカ&ユージのスタイリッシュでクールな“あぶデカファッション”だ。 ドラマ『あぶない刑事』が最初に放映された1986年といえば、時代はまさにDCブランドブームの真っ盛り。『メンズティノラス』の金ラメスーツやショールカラージャケットなどを着こなした、いかにもDCブランドスタイルのセクシーユージと、いつも白のタブカラーシャツにブラックタイで『TETE HOMME(テットオム)』のダブルのスーツをスマートに着こなしていたダンディー鷹山に、当時のDCブランド世代はみんな憧れたのだ。
■きれいな所作にとことんこだわる
今回の新作映画でも、舘氏が演じるダンディー鷹山は「TETE HOMME」のトレンチコートを着用している。某メンズファッション誌のインタビューによると、「僕はあいかわらずコンサバなスーツ。保守的な洋服が好きですね。今回、ダブルも着ていますが、基本的には拳銃が出しやすいシングル。靴は音を出さないようにラバーソール。そういう機能性は意識します」と、あぶデカファッションについて語っている。 実は舘ひろし氏の格好良さとは着ている服やブランド云々(うんぬん)ではなく、まさにここにある。いかに洋服(スーツ)を着た時にきれいな所作ができるか。舘氏はそこにとことんこだわるのだ。イコールそれが役者としても役立っているのである。 例えばこんな舘ひろし伝説を聞いたことがある。医者の役を演じたときに大病院の回廊を歩くシーンで、着ている白衣のコートにどうしても自分が描くきれいなドレープが出ない。そこでわざわざ美しいドレープが出るようにTETE HOMMEのデザイナーの加藤和孝氏に、このシーンのためにだけに白衣のコートを仕立ててもらったのだそうだ。 舘ひろし氏は、映画『北北西に進路を取れ』や『シャレード』のケーリー・グラントのように英国調でグレーのピンストライプのスーツをお洒落(しゃれ)に着こなして華麗にアクションができる、日本で唯一無二の役者である。今回の映画でもお約束シーンとして登場するが、スーツを着て手放しで拳銃を構えてバイクに乗れる役者なんて舘ひろし氏しかいない。 舘ひろし氏といえば、バイクアクションも忘れてはいけない。やはりとことんバイクに乗った時の所作にこだわっている。例えば『西部警察』で最初に演じた刑事「タツ」こと巽総太郎はハーレーダビッドソンに乗っていたので、黒いTシャツにダブルのライダーズジャケット、レザーパンツというアメリカンスタイルだった。 巽が劇中で殉職して一度降板した後、再登板で「ハト」こと鳩村英次を演じた際はスズキのカタナに乗っていたので、いつもはスーツスタイルだがカタナに乗る時にはオールインワンのレザースーツを着た欧州のカフェレーサースタイルになる。分かる人がみればわかる細かな演出だが、バイク好きな舘氏ならではのこだわった役作りといえよう。 DCブランド世代ではない筆者がリアルに憧れた舘ひろしは、やはり『クールス』時代の舘ひろし氏である。革ジャンでハーレーダビッドソンに乗っていたクールスは矢沢永吉氏の『キャロル』の親衛隊で暴走族チームというイメージが強いが、そうではない。むしろ1970年代の原宿に集まっていたフィフテーズバイクファッションスタイルを楽しむ、今でいうファッションインフルエンサーであった。舘氏はそのクールスを結成したリーダーである。 クールス時代のこんな舘ひろし伝説もある。クールスは「血の結束」と呼ばれていて、舘氏はクールスを辞めるメンバーに、指に嵌(は)めているカレッジリングをカツン、カツン……と机に鳴らしながら静かに説教をして、その迫力ときたらスゲェー怖かったという。 ちなみに、クールスのサブリーダーは岩城滉一氏である。雑誌『POPEYE』が創刊して間もない号で、「いつの時代もワルのファッションは憧れだ」という特集で、ジェームズ・ディーンのように赤いドリズラーを着た岩城滉一氏と、古着のアワードジャケットを着た舘ひろし氏がモデルで登場している。