住民参加はわずらわしい? 傍聴で自由に撮影・録音できる議会3%
請願・陳情「採択ゼロ」約半数。一方で議会報告会開き、住民意見を政策につなげる仕組みあり194議会
住民から地方自治体へ要望があったときに議会に提出できる請願や陳情はどのような状況でしょう。議員の紹介が必要な請願の審査・調査数で最も多いのは「1~10件」(64.0%)ですが、「0件」も3割弱ありました。採択数も「1~10件」(51.0%)と、採択「0件」(47.9%)とほぼ同程度になっています。議員の紹介を必要としない陳情は、審査・調査数「1~10件」が約4割、「0件」36.0%で、ほぼ同じ割合です。採択数は「1~10件」(41.6%)より、「0件」(55.2%)が多く、半数以上の議会が採択していないことがわかりました。 住民と直接対話する「議会報告会」の実施状況については、「年1回」設けているところは約3割ありましたが、「年3回以上」設けているところになると合わせて6.4%までにとどまります。「予定なし」の議会も4割以上でした。 さらに議会報告会を実施した後、住民からの意見をどのように公開・報告しているかについては、意見内容の「インターネットで公開」(56.0%)、「紙媒体で公開」(60.5%)が中心で、その意見の対応状況についても、インターネットや紙媒体で公開している議会が3割弱でした。議会報告会で出た住民意見を政策につなげる「仕組みがあり」と答えたのは194議会で、「特になし」は403議会でした。
地域の現実の課題解決、地域の未来を創るため、「住民参加の場を」
地方議会は住民に十分活動を発信できていたのか。同研究所の中村健事務局長は、「極端なことを言うと、今までの議会はどちらかというと住民には知ってほしくない、気が付かれたくない、そういう傾向があったと思う」と指摘します。もし、住民の声を聞けばいろんな声が上がり、集約して議論する時間がわずらわしい。そのため、「『住民の声聞きます』と言っておいて、そっとホームページ上に『声お寄せください』という感じ。それが今までの住民の声を聞く、ってことだったと思う」。 しかし地域から人がいなくなる、経済が縮小していく。20年後、30年後にはどのくらいの町や村が消滅するのかという人口減少時代に入り、「住民代表としての議会議員の役割を問われるようになってきた今、ようやく本当の住民参加ってなんだ、ということに目覚めてきたのが今の状態」と話します。 「法の目を抜けてしまうような地域が抱える現実の問題や課題を吸い上げるのは、法の下で動いている執行部には出来ない。それを解決するのは、政治、すなわち議会の出番」。だからこそ「議会が住民との直接対話、住民の声にきちんと耳を傾け、現場の課題を解決していくことが求められている」。実際に、議会報告会の住民意見を基に、地域の問題解決のきっかけを作った議会の事例も出てきていると言います。 また、今の課題を解決するだけでなく、「地域の未来を創っていくための住民参加の場をつくっていく」ことも議会に求めています。「限りある財源、あれもやってくれ、これもやってくれという話には到底応えられない時代になり、将来を考えて、例えば敬老祝い会は今年で打ち切って貯蓄に回す、という判断をしなくてはいけなくなる」。今後増える行政から受けている補助金やサービスの縮小・廃止には、住民の反発が予想されます。そこで「住民と、きちんと対話をし、ちゃんと未来のビジョンを共有し、合意形成をはかっていく。これも住民との対話、議会の出番だと思う」。 加えて「自分たちにも跳ね返ってくることだから、こうした議会活動を住民が知って、議会との対話をこれからは意識していくと地域にとってはプラスになる」と、住民側の地方議会への関心向上も望んでいます。