アート作品の「自撮り破壊」が急増中! 保険会社が「セルフィー・パンデミック」と警告
美術品を扱う保険会社ヒスコックスのアート&プライベート・クライアントの責任者であるロバート・リードは、近年の美術品に関する業務の半分は偶発的な損害で、自撮りによるものが驚くほど多いとし、これらの状況を「セルフィーのパンデミック」と呼んだ。 実際に、美術施設の来館者が自撮り中に展示作品を破損させる事故は世界中で起こっている。有名な例を挙げると、2017年にロサンゼルスのポップアップギャラリー「14th Factory」で自撮りをしていた観客がインスタレーションをドミノ倒しにし(セルフィー・ドミノ)、20万ドル(現在の為替で約3000万円)相当の美術品を破壊した。また、2017年にはワシントンD.C.のハーシュホーン美術館と彫刻の庭で展示された草間彌生の「インフィニティ・ルーム」内のカボチャが、自撮り中の観客に踏みつけられた。 アート作品は指紋にすら弱いものもあり、ましてや人間と接触するようなことはありえない。 自撮りにまつわるアクシデントは滑稽に聞こえるかもしれないが、貴重な作品の損壊は、文化的価値や経済的損失の観点から言っても決して笑い事ではない。 美術館は、新しいテクノロジーに適応しながら作品を安全に次世代へと受け継ぐ使命を負っている。それゆえ、大英博物館やブリスベンの近代美術館など、多くの施設は自撮り棒での撮影を禁止するなど対策を講じている機関も多い。 現在美術館では、ロンドンのナショナル・ギャラリーで環境活動家がゴッホの《ひまわり》にトマトスープを投げつけた事件など、アート作品をターゲットにした環境活動家による抗議行動が続いている。セルフィー事故に対する取り組みを含め、美術館はいま「空港並みの厳重な警備」を行う必要性が増しているのだ。