<春に輝け・常総学院の挑戦2021>/上 「最弱世代」自覚から団結 「基本」意識し反復練習 /茨城
「最弱世代」。現チームをそう呼ぶ声もあった。2年生の中で、夏の代替わりまでにスタメンを経験したことがあるのは三輪拓未(2年)1人。1、2学年上の部員は体格と長打力に優れ、昨春巨人入りした菊田拡和など飛び抜けたメンバーも擁していた。実力者ぞろいの先輩に比べ、見劣りのする後輩。スタートは、そんな低評価から始まった。 2020年7月末。新チームの初ミーティングで、島田直也監督(50)は「まずは基本に返ろう」と、部員たちを見つめた。新キャプテンに選出された田辺広大主将(2年)を中心に、部員たちで「どうやったら勝てるチームになるのか」と、徹底的に話し合った後の一言だった。 15年間のプロ生活を経て、7月に就任したばかりだった島田監督にとって、部員たちは「どこかだらけている」という印象だった。一方で、「最弱世代」の評判を認識しながらも、先輩たちが届かなかったセンバツ出場の切符を目標とする気持ちは理解できた。チーム改革が始まった。 練習は、グラウンドに向かって整列してのあいさつから始まる。島田監督の、「野球だけやっていれば良いんじゃない。プレー以外の部分がしっかりすることで、プレーの成長につながる」との考えから始められた習慣だ。監督が生きてきたプロの世界では「できて当然」だった礼儀や日々の意識を、言外で部員たちに学ばせた。遅かったグラウンド整備や片付けにも真剣さが見え始め、チームは「基本」を意識して逆方向へのバッティングやバントなどの反復練習に取り組んだ。なかったのは、監督からの具体的な指示だった。 新チーム初の公式戦は、ミーティングから1カ月後の県南地区選抜大会だった。結果は準決勝で藤代に1点差で敗れてのベスト4止まり。この試合だけでフライアウト18の惨めな結果に、部員たちの胸中には「このままでは、甲子園どころか関東大会にすら出場できない」と危機感が生まれた。 ここで島田監督が口を開いた。約2カ月、部員たちが何を考え、どう動いているのかを見極めようと、あえて観察に徹してきたのが真相だった。「打ち上げて何になるの。俺の野球は強いセンター返しだ」。戦い方のイメージを得て、部員たちの目つきが変わった。 県大会では、単打に犠打を絡めたつなぐ野球で準優勝。続く関東大会では、島田監督が「子供の成長ってすごいな」と感心する快進撃で4試合52安打、チーム打率3割8分8厘の好成績で、センバツへの道を切り開いた。 田辺主将は「力がないことを自覚していたからこそ、チームが一つになれた」と話す。「センバツ出場」という新チーム結成時の目標を実現させた今、目指すのは、さらなる高みだ。(この企画は長屋美乃里が担当します) ■ ■ 5年ぶり10回目のセンバツ出場を決めた常総学院。その奮闘と軌跡をたどる。