「皇位継承、首相はふらついている」 国連委の皇室典範改正勧告に政府抗議も懸念の声
日本政府は皇位継承を男系男子に限る皇室典範に関し、改正を勧告した国連の女性差別撤廃委員会に抗議するとともに、最終見解からの削除を申し入れた。林芳正官房長官が30日の記者会見で明らかにした。ただ、石破茂首相は就任前、母方にのみ天皇の血筋を引く「女系天皇」の議論の必要性を主張した経緯がある。皇位継承という国の基本にかかわる不当な干渉に対峙できるのか、首相の本気度が問われる。 【写真】「ローマ教皇やダライ・ラマも男性」と国連で反論 葛城奈海氏、日本の皇位継承への批判に ■「事実上の内政干渉」 「(女性差別撤廃委の)最終見解に皇位継承に係る記述がなされたということは大変遺憾だ」 林氏は30日の記者会見でこう述べた。林氏の説明によると、日本政府は審査の段階で「わが国の皇位継承のあり方は国家の基本にかかわる事項であり、取り上げることは適当ではない」と説明していたという。それにもかかわらず勧告が行われたことに、外交筋も「事実上の内政干渉だ」と指摘する。 皇位継承を巡っては、女性差別撤廃委が29日、日本の女性政策について最終見解を公表。男系男子に皇位継承を限る皇室典範の規定について、女性差別撤廃条約の理念と「相いれない」と指摘し、皇室典範の改正を勧告した。 皇室典範を巡っては、前回の2016年審査時、改正勧告を盛り込む最終見解案に日本側が強く抗議し、記述が削除された経緯がある。 ■立民、維新も勧告に反発 同委の最終見解には各党幹部も反発を強めた。 立憲民主党の野田佳彦代表は、女系天皇誕生の糸口になりかねない「女性宮家」の創設に意欲的だが、勧告に対しては「国連に言われて(皇位継承の議論を)進めるものではない」と主張した。日本維新の会の馬場伸幸代表も「皇位継承は日本独特の文化であり、他国の文化・歴史と違う。2000年以上続いた歴史を変える必要はない。理屈とは違う」と不快感を示した。 もっとも、女性差別撤廃委に修正を求めていく上で肝心の石破首相は就任前の8月、インターネット番組で「男系の女性天皇の可能性、女系の男性天皇の可能性、これを全部排除して議論するのはどうなのだろうか」と述べ、女系天皇の議論の必要性に言及していた。 その後、9月の自民党総裁選期間中には「男系男子でやってきた。それが日本の伝統だ。それを尊重するのは当たり前のこと」と発言を修正したが、自民内では首相の男系男子の維持に向けた本気度をいぶかる声が根強い。
保守系の自民中堅議員は首相に対し、こう危惧する。「首相の皇位継承への考え方はふらついている。危うさを感じるのも事実だ」(永原慎吾)