7月上旬再開が具体化してきたJリーグが感染症専門家チームから提言された3つの必要条件とは?
そして、後者の要望を聞いた村井チェアマンは、国際サッカー連盟(FIFA)から今年限りの特例で承認されている、交代枠を「3」から「5」に増やすルール変更の導入を思い浮かべた。さらに再開後は当面の間、対戦カードを変更する作業も必要なのでは、と考えるようになったという。 「チームの移動距離をなるべく短縮できるような配慮もしていただけないか、と専門家の先生方から要望されました。そのなかでなるべく近隣地域のチーム同士をマッチメークして、競技日程を組み直すような努力をしたなかで、再開を迎える配慮も必要なのかもしれない、と」 さらに、専門家チームの座長を務める、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染制御学)は「事前検査、というものが必要だと判断しています」と明言する。これは、すでにリーグ戦を再開あるいは開幕させているドイツおよび韓国で選手らに徹底している、感染の有無を調べる検査に他ならない。 新型コロナウイルス対策連絡会議で共有された提言書の改定版では、公式戦開催にあたっては選手およびチーム関係者に対し「各種検査(抗原・PCR・抗体など)については最新の科学的知見、医療の現状、検査体制の充実、結果の解釈や対応を含めて検討されることとする」と記されている。 もっとも、選手やコーチングスタッフ、審判団らを含めれば2000人を超える人数が、優先的かつ継続的にPCR検査を受けるのは国民の理解が得られない、と村井チェアマンは難色を示していた。 「ただ、北海道大学でいま、鼻腔ではなく唾液によるPCR検査の検証が進められています。また、唾液で抗原検査ができるようになれば数十分で陽性か陰性かがわかるので、いま現在の(PCR検査の)状況を考えれば、抗原検査をスクリーニング的に行う考え方がいいかもしれません」
発熱や倦怠感などの症状が出ていない選手やスタッフをふるい分ける方法として、すでに保険適用が決まっている抗原検査の実施を賀来特任教授が勧めれば、専門家チームの一人である愛知医科大学大学院医学研究科の三鴨廣繁教授(臨床感染症学)も、唾液ならば検査の効率化が図れると続いた。 「鼻腔で行う抗原検査は限界だと思っています。唾液による検査は鼻腔と(検出感度が)ほとんど同じというデータも出ていますし、おそらく国も近いうちに認可してくれると聞いています」 感染症の専門家による、いままでよりも踏み込んだ意見による後押しを受けて勇気づけられたのか。高く険しいハードルとして存在してきた事前検査へ、村井チェアマンも「医療関係を含めた各方面の方々と協議を進めながら、実現へ向けて努力を積み重ねていきたい」と前を向いている。 今後は25日に示される政府見解を注視しながら、JPFAや各クラブの強化担当者、契約担当者といったステークホルダーと週明けから矢継ぎ早に協議。ウェブ会議形式で29日に再び招集する臨時実行委員会をへて、サッカーが戻ってくる具体的な日付がついにアナウンスされる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)