勝ちすぎ! 「勝率8割5分」の藤本渚五段(18)は「ウルトラQ」と「スピッツ」が好き? 取材で見えた“素顔”と“大きすぎた挫折”
大阪の街を歩く青年。将棋棋士の藤本渚五段だ。18歳の彼が今、将棋界に旋風を巻き起こしている。 【映像】“団体戦”で実現! 藤井七冠VS藤本渚五段 勝者は? 激戦の末、“絶対王者”を破って初タイトルを獲得した伊藤匠叡王。藤井聡太七冠との同学年対決は、今の将棋界をリードするのが21歳のこのふたりであることを強く印象づけた。そして今、彼らを猛烈な勢いで追い上げているのが、3歳若い藤本渚五段だ。 2023年度の藤本五段は正に驚異的な活躍ぶりだった。年間51勝は伊藤叡王と並んで1位。勝率8割5分は藤井七冠に次ぐ堂々の2位。この数字は歴代のランキングでも4位というとんでもない成績で、勝ちまくった1年間だった。 注目の若手棋士、藤本渚五段。その素顔に迫る。 「(2023年度は)すごくできすぎた成績。8割5分で年度を終えるのは実力以上のものを出し切ったような気がするが、自信にはなった」
2024年度も絶好調の藤本五段。竜王戦の予選にあたるランキング戦では6組で見事に優勝し、藤井七冠への挑戦権をかけた決勝トーナメント進出を決め、6月24日時点で対局数、勝利数、そして連勝の3部門でランキングトップに立っている。 2005年、香川県高松市生まれ。誕生日が海の日だったことから「渚」と名付けられた。 自分の性格について聞くと「がさつというか、めんどくさがり。小学校の頃から片付けが苦手だと言われ、机も汚い」と話した。
おととしの10月、17歳でプロ棋士となった藤本五段。実は1年目で大きな挫折を味わっている。デビューから6連勝と順調なスタートを切った7戦目。対局場のはずの関西将棋会館に行くと… 「9時20分くらいに会館に着いて、自分の対局が何階であるのか見てみたら、女流棋士の対局しかなくて、冷や汗が出てきた」 なんと、その日の対局場は東京の将棋会館だった。対局開始予定時刻は午前10時。不戦敗の連絡をすることに。プロになって初めての黒星はまさかの不戦敗だった。 「棋士として一番不甲斐ない、やってはいけない負け方をしたと思うので、自分を責めた」 さらに悪いことは続き、次の対局の前日に新型コロナに感染し、2戦続けての不戦敗に。気力も体力も回復しないまま続く2局も連敗し、悪夢の4連敗。 「ちゃんと切り替えようと思い、勉強して次の対局は絶対に勝とうと臨んだ」 どん底から懸命に気持ちを切り替えた藤本五段。去年11月には若手が参加する棋戦、加古川青流戦で優勝し、その他の棋戦でも次々と上位に進出した。