フランスの政治不安、日本株に嵐を呼ぶリスク-蘇る2017年の苦い記憶
(ブルームバーグ): 遠く離れたフランスの政治混迷が日本株に思わぬ深刻な影響を及ぼすのではないかとの警戒感が投資家の間で出ている。まるで北京で蝶が舞った結果生じるわずかな気流の変化が巡り巡ってニューヨークで嵐を引き起こす「バタフライ効果」にも似た動きだ。
警戒感の裏にあるのは7年前の苦い記憶だ。2017年の仏大統領選挙では、中道穏健派の候補が第1回投票で生き残れないのではないかとの不安から世界の株式投資家が神経質になる中、第1回投票までの4週間で東証株価指数(TOPIX)のパフォーマンスは仏CAC40指数を1.6ポイント下回った。日本株は欧州、米国だけでなく、中国やインドなどの株式指数をもアンダーパフォームした。
しばしば「世界の景気敏感株」と称される日本株には時価総額トップのトヨタ自動車をはじめグローバル企業が多く、海外の政治や経済情勢など外部要因の影響を受けやすいのが特徴だ。また需給面でも、東京証券取引所の投資家売買代金の約7割を海外投資家が占めており、中でも欧州勢は昨年の海外勢の日本株買越額3兆1215億円のうち、82%を占めるなど強い影響力を持つ。
JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは、欧州投資家の日本株に対する投資意欲は欧州全体のリスク志向と関連していると指摘。同氏によると、欧州大陸のリスク指標としてよく用いられるイタリアとドイツ国債の利回りスプレッドと、ドイツ上場の日本株指数連動型上場投資信託(ETF)への資金流入額とは密接な関係が見られるという。
マクロン大統領が唐突に国民議会(下院)選挙実施を表明したことを受けてフランスの政治・財政へ懸念が強まり、欧州債市場ではドイツと周辺国国債との利回り格差が急拡大している。フランスとドイツの利回り格差は今週、17年以来の水準にまで拡大した。
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ニッセイアセットマネジメントの松波俊哉チーフアナリストは「自国株が政治リスクなどで下落すると、投資家は総じてリスク回避的になる傾向がある」と指摘し、フランスや欧州の投資家による日本株への投資意欲が低下する可能性があるとの見方を示す。