ロボットの夢に、日本的感性色濃く パブロ・ベルヘル監督が語る高畑勲、宮崎駿の影響
大人も感涙してしまうアニメーション映画「ロボット・ドリームズ」。登場するのは擬人化された動物たちで、大都会のニューヨークで暮らす孤独なドッグ(犬)と友達ロボットとの友情を描いている。原作は米国のグラフィック・ノベル作家、サラ・バロンによる同名の人気書籍。日本のアニメを見て育ったというパブロ・ベルヘル監督は、「日本的感性が色濃く盛り込まれている」と語った。 【画像でみる】アニメーション映画「ロボット・ドリームズ」のワンシーン 漫画のようにコマ割りされたビジュアル画面で物語をつづるグラフィック・ノベルを収集していたベルヘルが、2010年にバロンの本を購入。数年後、再び原作を読んだ際、エンディングで心を突き動かされ泣いてしまったという。 「亡くなった友人や愛する家族との思い出がよみがえってきて、そういった人たちにささげるオマージュのような作品になるのではないか、とアニメ化を思い立った」 アニメ映画は今回が初挑戦で、脚本も手掛けた。ベルヘルは「私は全面的に日本のアニメの影響を受けている」と話し、高畑勲監督の「アルプスの少女ハイジ」や「母をたずねて三千里」を見て育ったという。「特に宮崎駿監督の『紅の豚』を見て衝撃を受け、大きな影響を受けた」と振り返る。 「本作を作っている間も、スタジオに宮崎や高畑の作品を置き、困ったときはそれらを参考にした。日本のアニメはストーリー展開に時間をかけ、感情面にも重きを置いているので、大人でも楽しめる」と称賛の言葉を惜しまない。 今回のアニメ化に当たり、原作にはない場面が多く付け加えられた。原作では米国の街というシンプルな設定だが、「意識的にこの作品の主人公はドッグとロボットとNYの街と決め、1980年代のNYを前面に出した」。NYは後に妻となる日本人写真家と出会い、一緒に10年ほど暮らした街という。 また、冒頭にドッグが一人寂しく電子レンジで温めた料理を食べ、無表情でビデオゲームをしている場面が登場するが、原作にはない。「どんなキャラクターかを分かりやすくするため、ドッグの孤独な様子を描いた」 ベルヘル自身の姿も、投影されている。「私がNYに初めて着いたとき、ドッグのような感じだった。妻とも知り合う前で、一人で本当に孤独だった。この映画は孤独がテーマの一つでもあるが、人生には出会いや別れがあり、その記憶を大切にしながら生きている。この映画自体が人生そのものを描いている」