作曲家・千住明 ドラマ「VIVANT」の音楽制作を振り返る「監督からは『誰が聴いても「VIVANT」というものを書いてくれ』と、それだけでした」
放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00~15:50)。5月26日(日)の放送は、作曲家・編曲家の千住明(せんじゅ・あきら)さんをゲストに迎えて、お届けしました。
◆ドラマ「VIVANT」の音楽を担当
1960年生まれ、東京都出身の千住さん。慶應義塾大学工学部を中退した後、東京藝術大学作曲科へ進み、同大学院を首席で修了。これまで、「高校教師」(TBS系)、「家なき子」(日本テレビ系)、「砂の器」(TBS系)などのドラマをはじめ、映画、アニメ、オペラ、ゲーム音楽など数多くの作品に携わり、昨年放送のドラマ「VIVANT」(TBS系)の音楽を手掛けたことでも話題になりました。 小山から「映画やドラマは、脚本を読んで作曲するんですか?」との質問に、千住さんは「そうです」と即答。なぜなら、「完全に僕らはオーダーされる側ですから、台本をいただいて初めからオーダーメイドで作っていく」と話します。 なかでも、映画の場合は「映像と音楽のシンクロをきっちりさせていくわけですから、撮影と同時に(作曲を)。ですが、昔はコンピューターとか機械がなかったので、毎回、デモテープを作ってラッシュの毎に監督に聞かせていました。映画ではかなり時間をかけて作っています」と言います。 それを聞いて、「どうやったらそんなことができるのか、想像がつかないです」と驚く小山。千住さんいわく、昔は今と違って想像力が必要だったそうで「昔の監督は、ふわっと見て『違う、何か違う』と、それだけなんですよね。それで読み取らなきゃいけないという(苦笑)。ですから、この人は何を考えているのかなど、占い師のようなとても難しいことをやらないといけないんです」と当時の苦労を振り返ります。 一方、最近では監督も一緒になって考えてくれるケースもあり、「(昔と違って)むしろ、ある意味ラインが決まっているので、随分スピードもアップしたし、クオリティも上がっていると思います」と時代の変化も感じているそう。 とはいえ、オファーした相手が納得できる作品をゼロから生み出すのは、容易ではないと言っても過言ではありません。例えば、昨年話題となった「VIVANT」の音楽を担当した際には、「監督(福澤克雄さん)からは『誰が聴いても「VIVANT」というものを書いてくれ』と。それだけなんですよ(苦笑)。それで皆、(撮影のため)モンゴルに行っちゃったので、僕だけが残されて」と回顧。そんな裏話に小山と宇賀は驚きつつも、声を上げて笑います。 福澤監督からその言葉を預かったものの、「(ドラマの)内容が秘密だったので、僕もある程度のことしか知らないんです。『「VIVANT」って何なの?』と。だから象の耳に触って尻尾を描いていたようなものでしたね(苦笑)」と千住さん。 とはいえ、「(福澤監督の要望に応えられるだけのクオリティを)“出せる!”っていう自信は経験からあるわけですね。例えば、大河ドラマのテーマ曲だと、全部の放送を合わせると200回以上はかかるわけですね。途中で飽きさせるといけないから、どんどん噛めば噛むほど味が出てくるスルメのような音楽を書かないといけないわけです。だから、そういう意味では、最初のドレミを書くのに一番大変な思いをしていて、絞り出すのにもいろいろな方法があるんですね。それがいつか自然と出てくるのはわかっているんです」と長年の経験で裏打ちされた自信をのぞかせます。