医療的ケア児の災害時対応、国の指針はあるけれど…保育現場は試行錯誤に苦心 電源確保は命に直結、個別具体の対応不可欠 求められる自治体協力
こども家庭庁は、たんの吸引や人工呼吸器などが日常的に必要な「医療的ケア児」(医ケア児)を受け入れている保育現場向けに、災害対応指針を作った。歩くのが難しかったり、医療機器の携行が必要だったりするなど、配慮が必要なためだ。子どもの特性に応じた機器や電源の準備、避難ルート設定を求めており、指針を参考に業務継続計画(BCP)の策定を促していく。 4月に鹿児島市に開所した小規模の認可保育所「らしさ保育園いろどり」(定員12人)には、医療的ケア児1人が在籍する。園は策定した事業継続計画(BCP)に基づく避難訓練を月1回実施。課題を洗い出し、試行錯誤しながら備えを進める。 園外に避難する場合、健常児は複数が乗れる散歩用カートで移動する。医ケア児は普段バギー型車いすを使うが、抱いての避難もあり得るため、どの職員も対応できるようにしている。 運営する法人の奥和紀事業推進部長は「注射器やチューブ、注入食などをまとめた個別の災害用かばんを用意できれば理想的」と話す。地震発生時の避難所は約650メートル離れた公民館。「天候や道路状況などによって移動するべきか、とどまるべきか、難しい判断になると思う」と明かす。
入園時に提出する緊急連絡先や服薬する薬の種類、食事の方法などを細かに記した「基本情報シート」は災害時にも活用。家族への情報発信も備えの一つになるとして、停電や発災時に必要な準備についての資料も配布している。 呼吸器や吸引器を使う医ケア児にとって、電源確保は命に直結する。ただ、ポータブル電源を何台も用意するのは難しい。電源のいらない手動の機器をそろえるほか、車のシガーソケット活用など模索する。 国の指針は大まかな内容で、現場では一人一人に合わせた具体的な対応が求められる。奥部長は「実効性のある計画を作るために、情報提供など市町村が積極的にリードしてくれたら」と語った。
南日本新聞 | 鹿児島
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