【9番街レトロ・京極風斗】「魅力的な人と付き合うには覚悟がいる。」
神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動している芸人「9番街レトロ」の京極風斗(きょうごく・かざと)さんは、極端なほどに“0か100か”で生きている。今回は、気づかないままでいるとヤバい「愛」にまつわる“ゼロヒャク”なお話。幸せってなんだろ?って思ってる人は、ぜひ読んでみて! 有名人なんてほぼ全員「変」なんです。
9番街レトロ・京極風斗
連載【0か100かで生きてゆく #59】 ー 魅力的な人と付き合うには覚悟がいる。 ー
Illustration: Kazato Kyogoku
「普通」であることの価値
魅力的な人間には欠陥がつきものです。 いわゆる「クズ」がモテたりしますよね。 無職だったり、ギャンブラーだったりでクズの形は様々ですが、おおよそ社会では通用しないような人間が誰かの母性をくすぐり、「私が守るしか……!」なんてバカな考えを引き出すのでしょう。 読者の皆様の中にもそのような気質の方がいらっしゃるかもしれませんので、強く忠告しておきます。 一瞬のトキメキに身を委ねるな。 彼は夢を追いかけるバンドマン。重たい前髪で表情は見えないけれど、あの前髪の裏にはきっと、私には想像もつかない世界が広がっている。 真面目に働きもせず、渡したお小遣いをポケットにねじ込み、下北、三茶をフラフラする毎日。お酒を飲んで、帰って来て、シャワーも浴びずに寝て、15時頃に目覚めて、覆い被さってきて、キスしてきて、今日2人で行くはずだったディズニーは、なし崩し的になくなって。 でも、それでも愛しているから。 この木造アパートが、私達のミラコスタだから。
やかましいわ。
それらを「エモい」なんて知性のカケラもない言葉で形容し、履き違え、後悔するんです。無駄な時間とお金を使うのです。 一度、そいつの前髪を上げて眼(まなこ)を見てください。必ず甘やかされて育った人間の潤い方をしています。子供用のビニールプールみたいな、ひっくり返したらそれでしまいのしょーもない眼です。それならビニールプールにお金を使った方がマシですよ。楽しいから。 今は良いかもしれません。若くてカッコよくて、将来本当に夢を叶えるかもしれません。 しかし、そのままダラダラおじさんになった場合、同じ様に愛せますか? 今から全く同じ文章を貼りますので、次は皆さんの身の回りにいるおじさんをマッシュヘアにした奴を思い浮かべて読んでください。 彼は夢を追いかけるバンドマン。重たい前髪で表情は見えないけれど、あの前髪の裏にはきっと、私には想像もつかない世界が広がっている。 真面目に働きもせず、渡したお小遣いをポケットにねじ込み、下北、三茶をフラフラする毎日。お酒を飲んで、帰って来て、シャワーも浴びずに寝て、15時頃に目覚めて、覆い被さってきて、キスしてきて、今日2人で行くはずだったディズニーは、なし崩し的になくなって。 でも、それでも愛しているから。 この木造アパートが、私達のミラコスタだから。 もう全部の行が許せないでしょ? 頼むから黙って働いてほしいじゃないですか? 絶対に真面目で堅実な人間が最強なんです。 「普通」であることの価値を忘れないで頂きたい。 それを「つまらない」と思うのは勝手ですが、この自己顕示欲にまみれた社会で「つまらない人間」でいられることがどれだけ偉いことか。 夢を追う姿は魅力的かもしれません。 社会に反発する姿は魅力的かもしれません。 集団で1人浮いている姿は魅力的かもしれません。 しかしそれは「今のあなたにとって」です。 他人の魅力的な部分は、長く付き合う上で最強の短所に変わりうるということです。 目を惹くということは「変わっている」ということです。文字通り「変」な奴なんです。 「変」は人間としての欠陥です。 有名人なんてほぼ全員「変」なんです。 それでも愛したいのなら、それにはそれなりの覚悟がいるということを、お伝えしておきます。 幸せとは、「普通」ってことです。