カラスの「おどし飛行」は我が子を守る威嚇行動 カラス被害を回避するには
「威嚇」の前に大きく鳴く「警告」サインを見逃すな
「おどし飛行」を決行する前に、警告を発することが多い。カラスは繰り返し大きな声で鳴くことで、「あなたは我が家の子育てエリアに入りました。すみやかにエリア外に出てください」という警告を発して退去を促す。この警告にいち早く気付いて現場から離れると、威嚇トラブルは未然に防げるので、覚えておきたい。 地上でカラスの幼鳥を見つけても拾ってはやめよう。巣立ったばかりの幼鳥は、森の中で枝渡りをしながら親の後を追いかけていく。しかし、都市部の公園などでは樹木が連続していないため、飛行訓練の途中であやまって地面に下りてしまうことがある。幼鳥がよちよち歩きでも、ケガをしているわけではない。 カラスの威嚇は子どもを守るための行動なので、幼鳥が迷子になったと思い、人が拾って保護しようとすると、むしろ逆効果に。親鳥には目の前で我が子が誘拐される状況にみえるため、激しい威嚇の対象になってしまいかねない。幼鳥が少々もたついていても親鳥が必ず近くで見守っており、人は幼鳥が親鳥の誘導で安全な場所へ戻るのを待てばいい。
カラスだって本当は「巨大な人間」が怖い
隣人ながら、あまりお付き合いのないカラスに対するイメージを、少し見直したい。たとえば、人に対する威嚇行為を、カラスが必要以上に何度も繰り返すことはないという。なぜなら、おどし飛行は自在に飛び回る能力を生かして軽々とやってのけているように思えるが、実は勇気を振り絞らなければできない必死の行動だからだ。 羽ばたくカラスを地上から見上げると、恐怖心も加わってとても大きく感じるが、カラスの体重は800g程度。ペットの犬や猫と比べると、格段に軽い。子どもや小柄な女性の体重が40kg、大柄な大人が80kgとすると、カラスは体重が50倍、100倍の相手に対して、威嚇行動を仕掛けることになる。 同じ構図を人間に当てはめてみよう。大人なら体重8トンの巨大生物に肉薄し、エリア外に追い出す作戦を敢行することになる。カラスたちは我が子を守るため、懸命に勇気を振り絞って威嚇作戦を決行していることを、頭の片隅に置いておきたい。 カラスも人が怖い。必要以上の威嚇をすることはない。市健康局健康推進部の担当者は「カラスの威嚇で市民がケガをするのは、高齢者などがびっくりしてバランスを崩し、転倒した場合などに限られます。威嚇されても慌てないで、カラスを見ながら落ち着いて立ち去ってください」と呼び掛けている。 カラス被害を未然に防ぐためには、カラスのえさとなる生ごみを減らすなど、地域ぐるみでごみの出し方を工夫することが重要。市環境局ではカラスにごみを荒らされないようにする防鳥用ネットの貸し出しを実施している。詳しくは大阪市の公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)