騎手がレース中に落馬し死亡… 労災の対象にならない「個人事業主の補償」はどうなっている?
日本中央競馬会(JRA)所属の藤岡康太騎手が、レース中の落馬事故により4月10日にこの世を去った。業務中の事故により死亡した場合、会社員・公務員であれば「労災」の対象となるが、騎手は個人事業主なので、労災の対象とはならない。では、補償を受けられる制度は一切ないのだろうか。また、騎手以外の個人事業主の場合はどうだろうか。
JRAの騎手が全員加入する「共済」
まず、JRA所属の騎手に対する補償については、日本中央競馬会法施行規則2条の4第4号で、JRAが以下の業務を行わなければならないと定められている。 【日本中央競馬会法施行規則2条の4第4号】 「中央競馬の競走に関係する調教師、騎手及び競走馬の飼養又は調教を補助する者の能力の向上、労働環境の改善又は福利厚生の増進を図るために必要な業務」 業務上の事故で死傷した場合の補償は、このうち「労働環境の改善又は福利厚生の増進」にあたる。そして、JRAによれば、JRA所属の騎手が全員加盟する「日本騎手クラブ」が「共済制度」を運営している(JRAホームページ参照)。 日本騎手クラブの共済の補償内容については一般に公開されていない。ただし、地方競馬の騎手等のための共済事業を行っている「地方競馬共済会」があり、その給付事業の補償内容は公開されている。そこで、参考までにこの地方競馬共済会の給付事業の補償内容を紹介する。 業務上の事故一般を対象とした「一般給付」と、それとは別にレース中等の騎手の事故のみを対象とした「特別給付」があり、その補償内容は以下の通りである(地方競馬共済会ホームページ参照)。 【一般給付】(会費月2800円) (1)障害給付(業務上の事故により後遺障害が発生した場合):14級36万円~1級900万円~ (2)入院給付(業務上の事故により入院した場合):1日3,000円(手術加算あり) (3)遺族給付(業務上の事故により死亡した場合):900万円 【特別給付】(会費年3万円) (1)特別遺族給付:2500万円 (2)特別障害給付:100万円~2500万円(障害等級による) (3)特別入院給付:1日2000円(4日以上の入院に給付、180日目まで対象、手術加算あり) (4)特別通院給付:1日1000円(4日以上の通院に給付、180日目まで対象・90日限度) なお、以上はあくまでも地方競馬の騎手に関するものであり、日本騎手クラブの共済事業ではこれよりも手厚い補償を設けている可能性も考えられる。 いずれにせよ、騎手の場合、労災に代わるものとして、加入団体である「共済」による補償を受けることができる。 しかし、他の多くの業種の個人事業主にとって、このような共済が整備されていることは稀である。では、どうすればいいのか。実は、かなり多くの個人事業主が、次に述べる「労災の特別加入」という制度を利用できるようになっている。