「戦場の女神」自衛隊主力火砲の威力を記者が目撃
一連の射撃訓練が終わり、今後は砲弾が落ちたエリアを見学した。斜面には、直径2メートルほどのクレーターのような穴が点在しており、それらは砲撃によってできたものだという。その周りには、無数の金属片が散らばっていた。砲弾の破片である。
そのエリアには人間の上半身に見立てた模型が置かれていたが、肩のところから真っ二つに裂けていた。模型はゼラチンでできており、堅さは人間と同じだという。「生身の人間だったら、よほど素速く処置しない限り、死んでいるでしょうね」と案内してくれた自衛官は言った。 そばに置いていたマネキンも、ひじの辺りに破片が貫通して穴が空いていた。思わず振り返って、火砲が配置されている方向に目をやるも、肉眼では見えない。もし、なにかの伝達ミスがあって、いま、砲撃が始まったら…と思うと、寒気がした。
続いて、90式戦車への体験搭乗も行われた。制式化されたのが1990年であることから、90式と呼ばれる。 自衛隊の最新戦車は2010年に制式化された10式戦車であり、1世代前の戦車とはなるが、いまなお北海道を中心に現役で活用されている。戦車の製造には、多大なコストがかかる、「耐用年数が過ぎるなどそれぞれの個体が用途廃止されるタイミングで、90式から10式に入れ替えていく長期的な計画」なのだという。 最高時速はおよそ70キロ。体験搭乗では、時速40キロほどで走行したが、その機動的な動きはさながら大型自動車のようで、「戦車は『車』だったのか」と当たり前のことに驚いた。 なお、運転には自衛隊内部の特殊な資格に加え、「大型特殊自動車」の運転免許がいるそうだ。
90式は10式に比べて、射撃の照準の合わせ方や戦車同士の情報共有の仕方がアナログだというが、案内してくれた自衛官は「その分、乗り手の腕が試される」と愛おしむように90式を見つめていて、戦車は乗り手がいて初めて動くことを改めて感じさせられた瞬間だった。