より性能に磨きがかかった「Ryzen 7 9800X3D」。コアゲーマーなら求めない理由はない
11月7日、AMDより新たなデスクトップ向けCPU「Ryzen 7 9800X3D」が発売される。第2世代3D V-CacheとZen 5アーキテクチャを組み合わせた新世代のゲーマー向けCPUだ。 【画像】96MBのL3キャッシュを備える8コア/16スレッドCPU「Ryzen 7 9800X3D」 この発売に先立ち、Ryzen 7 9800X3Dのレビュアーズキットを借用することができたので、従来モデルのRyzen 7 7800X3DやIntel製CPUとの比較を通して、Ryzen 7 9800X3Dの実力を確かめてみた。 ■ 第2世代3D V-Cacheを備えるZen 5世代のゲーマー向けCPU Ryzen 7 9800X3Dは、Zen 5アーキテクチャを採用する8コア/16スレッドCPU。8基のCPUコアと32MBのL3キャッシュを備えるCCD(Core Complex Die)に64MBの第2世代3D V-Cacheを組み合わせることで、合計96MBの大容量L3キャッシュを備えている。対応CPUソケットはSocket AM5。 新たに採用された第2世代3D V-Cacheは、3D V-Cache上にCCDを積層するという形で実装されている。従来の3D V-CacheはCCDの上に積層する形で実装していたため、CPUコアで生じた熱をCPUクーラーに伝導する経路上で3D V-Cacheがボトルネックとなっていたが、第2世代3D V-Cacheは配置を逆にすることでこれを解消。より大きな電力(発熱)でCPUコアを稼働させられるようになった。 IODの機能はRyzen 9000シリーズと同等で、DDR5-5600対応のメモリコントローラやRDNA 2世代の2コアGPU「Radeon Graphics」、合計28レーンのPCIe 5.0などが統合されている。電力指標のTDPは120Wで、電力リミット(PPT)は162W。 ■ テスト機材、新旧3D V-Cache搭載CPUの性能を比較 今回、AMDより借用したRyzen 7 9800X3Dのレビュアーズキットには、CPUの他にAMD X870Eマザーボードの「MSI MPG X870E CARBON WIFI」と、DDR5-6000対応のオーバークロックメモリ「G.Skill F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW」が同梱されていた。 なお、AMDからはテストに際して同梱のメモリを使用することを推奨されたため、Ryzen 7 9800X3Dについては同梱のオーバークロックメモリを使用したDDR5-6000動作時のデータと、別途用意したスタンダードメモリによるDDR5-5600動作時のデータをそれぞれ計測する。 比較用のCPUには、前世代の3D V-Cache搭載CPU「Ryzen 7 7800X3D」、Intelの新世代CPU「Core Ultra 7 265K」、Intelの旧世代ハイエンドCPU「Core i9-14900K」を用意した。 比較環境については以下の通りで、比較用CPUのメモリクロックについては原則として各CPUの最大対応クロックに設定しているが、Core Ultra 7 265Kについては対応メモリ(DDR5-6400)を用意できなかったためDDR5-5600メモリを使用している。 Windowsの電源プランについて、AMDはRyzen 5000シリーズ以降のCPUでは「バランス」の利用を基本としており、Ryzen 7 9800X3Dのレビュアーズガイドにも「バランス」を使用することが推奨されている。これは省電力機能やブースト動作を想定通りに動作させることを目的としているため、今回のテストでも電源プランは「バランス」に設定した。 バランスはWindows標準の電源プランであるため、特に理由がなければIntel環境でもバランス設定を使用するのだが、今回の環境ではCore Ultra 7 265Kのみ「高パフォーマンス」に設定している。 これは、Core Ultra 7 200Sシリーズ(Arrow Lake-S)のレビュー時にIntelが「高パフォーマンス」の利用を推奨していることに加え、バランス設定では一部のテスト(UL Procyonなど)で2割程度と大幅に性能が低下する問題が生じているためだ。なお、最新のアップデートを適用したWindows 11 24H2(build 26100.2161)では、バランス設定時にCPUコア間レイテンシが数倍に増加する問題は解消したものの、一部のテストにおける大幅な性能低下は依然として解消されていない。 ■ ベンチマーク結果 今回実施したベンチマークテストは以下の通り。 ・Cinebench 2024 ・Cinebench R23 ・3DMark ・Blender Benchmark ・やねうら王 ・Adobe Camera Raw ・DaVinci Resolve 19 ・HandBrake ・TMPGEnc Video Mastering Works 7 ・PCMark 10 Extended ・PCMark 10 Application ・UL Procyon「Office Productivity Benchmark」 ・UL Procyon「Photo Editing Benchmark」 ・MicroBenchX ・AIDA64 Cache & Memory Benchmark ・ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク ・Forza Horizon 5 ・オーバーウォッチ 2 ・フォートナイト ・エーペックスレジェンズ ・サイバーパンク2077 ・モンスターハンターライズ:サンブレイク ・Microsoft Flight Simulator ・黒神話:悟空 ベンチマークツール なお、Ryzen 7 9800X3DはDDR5-6000動作時とDDR5-5600動作時のデータを計測しているが、ほかのCPUとの比較には定格動作であるDDR5-5600動作時のデータを使用する。特異な結果が得られている場合はDDR5-6000動作時のデータも紹介するが、単にRyzen 7 9800X3Dのスコアとして紹介するデータはDDR5-5600動作時のものであることに注意してもらいたい。 □Cinebench 2024 Cinebench 2024では、CPU性能を計測する「CPU(Multi Core)」と「CPU(Single Core)」を実行した。 マルチスレッド性能を計測するCPU(Multi Core)では、「1,298」を記録したRyzen 7 9800X3DがRyzen 7 7800X3Dを約21%も上回っており、マルチスレッド性能の大幅な向上が確認できる。ただ、このテストではコア数で勝るIntel製CPUが圧倒的に優勢で、Ryzen 7 9800X3DはCore Ultra 7 265Kを約34%、Core i9-14900Kを約39%下回っている。 シングルスレッド性能を計測するCPU(Single Core)では、「132」を記録したRyzen 7 9800X3DがRyzen 7 7800X3Dを約17%上回っており、シングルスレッド性能の向上も確認できる。このスコアはCore Ultra 7 265Kを約3%、Core i9-14900Kを約1%下回っているが、大差をつけられたマルチスレッド性能とは違い肉薄している。 Ryzen 7 9800X3DはDDR5-6000メモリを使用することにより、CPU(Multi Core)で約3%、CPU(Single Core)でも約2%スコアが向上。結果としてCPU(Single Core)ではCore i9-14900Kを逆転している。 □Cinebench R23 Cinebench R23では、マルチスレッド性能を計測する「CPU(Multi Core)」でRyzen 7 9800X3Dが記録したスコアは「22,807」で、Core Ultra 7 265Kを約36%、Core i9-14900Kを約39%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを約25%上回った。 「CPU(Single Core)」でRyzen 7 9800X3Dが記録したスコアは「2,099」で、Core Ultra 7 265Kを約9%、Core i9-14900Kを約9%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを約16%上回った。 □3DMark「CPU Profile」 3DMarkのCPUベンチマーク「CPU Profile」は、CPU性能をスレッド数毎に計測するベンチマークテスト。 Ryzen 7 9800X3DはRyzen 7 7800X3Dを23.8~37.4%上回っており、コアの稼働率に関わらず前世代を明確に上回るパフォーマンスを発揮した。Intel製CPUとの比較では、16スレッド以上ではコア数の多いCore Ultra 7 265KやCore i9-14900Kに差をつけられているものの、8スレッド以下ではCore i9-14900Kに近いパフォーマンスを発揮している。 □Blender Benchmark Blender Benchmarkでは、CPUテストを実行してレンダリング速度(Samples per Minutes)を計測した。 Ryzen 7 9800X3DはCore Ultra 7 265Kを28~33%、Core i9-14900Kを34~36%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを20~22%上回った。 □やねうら王 将棋ソフトの「やねうら王」では、ベンチマーク機能を利用してマルチスレッドテストとシングルスレッドテストを実行した。 マルチスレッドテストでは、Ryzen 7 9800X3DがCore Ultra 7 265Kを約28%、Core i9-14900Kを約36%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを約26%上回った。 一方、シングルスレッドテストでのRyzen 7 9800X3Dは全体ベストを記録しており、Ryzen 7 7800X3Dを約23%、Core Ultra 7 265Kを約7%、Core i9-14900Kを約3%上回った。 □Adobe Camera Raw「RAW現像」 Adobe Camera Rawにて、デジタルカメラで撮影した2,400万画素のRAWファイル100枚をJPEGファイルに現像するのに掛かった時間を測定。その処理速度(fps)を比較した。 Ryzen 7 9800X3Dの処理速度は「5.96fps」で、Core Ultra 7 265Kを約13%、Core i9-14900Kを約8%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを約19%上回った。 □DaVinci Resolve 19 DaVinci Resolve 19では、カメラで撮影した2160p60(4K60p)動画を素材として作成した約60秒の動画を、YouTube向けプリセットで1080p60と2160p60に書き出したさいの処理速度を計測した。 GPUとそのメディアエンジンへの依存度が高いテストであるため、Ryzen 7 9800X3DはRyzen 7 7800X3DやCore i9-14900Kとほぼ同等の速度を記録している。 なお、Core Ultra 7 265Kのみ他の環境より一段遅い結果となっているが、これは以前検証したCore Ultra 9 285KやCore Ultra 5 245Kでも確認されている現象だ。現時点では何らかの理由で十分なパフォーマンスを発揮できていないものと考えられる。 □HandBrake HandBrakeでは、約60秒の2160p60(4K60p)動画を「Creator」プリセットで1080pと2160pにエンコードしたさいの速度を計測した。 Ryzen 7 9800X3DはCore Ultra 7 265Kを約31%、Core i9-14900Kを29~30%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを約14%上回った。 □TMPGEnc Video Mastering Works 7 TMPGEnc Video Mastering Works 7では、ソフトウェアエンコーダのx264とx265を使用して、約60秒の2160p60(4K60p)動画をエンコードしたさいの速度を計測した。 Ryzen 7 9800X3DはCore Ultra 7 265Kを約27%、Core i9-14900Kを24~33%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを20~27%上回った。 □PCMark 10 PCMark 10標準のテストの中でもっとも詳細な「PCMark 10 Extended」を実行した結果が以下のグラフ。 Ryzen 7 9800X3Dは総合スコアで「15,146」を記録して全体ベストを獲得。Ryzen 7 7800X3Dを約11%、Core Ultra 7 265Kを約3%、Core i9-14900Kを約10%上回った。 □PCMark 10 Application Microsoft OfficeやWebブラウザのEdgeを使ってパフォーマンスの計測を行なう「PCMark 10 Application」の実行結果が以下のグラフ。 Ryzen 7 9800X3Dは総合スコアで「17,686」を記録。Core Ultra 7 265Kを約0.3%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを約5%、Core i9-14900Kを約2%上回った。 □UL Procyon「Office Productivity Benchmark」 Microsoft Officeを使ってパフォーマンスの計測を行なうUL Procyon「Office Productivity Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。 Ryzen 7 9800X3Dは総合スコアで「8,433」を記録して全体ベストを獲得。Ryzen 7 7800X3Dを約12%、Core Ultra 7 265Kを約1%、Core i9-14900Kを約4%上回った。 □UL Procyon「Photo Editing Benchmark」 Adobeの画像編集系ソフト(Photoshop、Lightroom Classic)を使ってパフォーマンスの計測を行なうUL Procyon「Photo Editing Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。 Ryzen 7 9800X3Dは総合スコアで「10,961」を記録して全体ベストを獲得。Ryzen 7 7800X3Dを約15%、Core Ultra 7 265Kを約13%、Core i9-14900Kを約12%上回った。 □CPUコア間のレイテンシ MicroBenchXの「C2CLatency」でCPUコア間のレイテンシを計測した結果が以下のグラフとマトリックス表だ。 Ryzen 7 9800X3DのCPUコア間レイテンシは平均22.3nsとなっている。Ryzen 7 7800X3Dと比較すると物理コア同士のレイテンシはさほど変わらない一方、同一CPUコア間(CPU0~CPU1など)のレイテンシは増加しているようだ。 □AIDA64 Cache & Memory Benchmark「メインメモリ性能」 AIDA64 Cache & Memory Benchmarkで、メインメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフ。 DDR5-5600メモリを搭載したRyzen 7 9800X3Dのメモリ帯域幅はリード57.6GB/s、ライト71.3GB/s、コピー52.0GB/sとなっており、DDR5-5200メモリを搭載するRyzen 7 7800X3Dよりライトは速いものの、リードは同等でコピーでは下回っている。 DDR5-5600メモリを搭載したRyzen 7 9800X3Dのメモリレイテンシは91.4nsで、DDR5-5200メモリを搭載するRyzen 7 7800X3Dの81.8nsより大きくなっている。 なお、DDR5-6000メモリを搭載したRyzen 7 9800X3Dはメモリ帯域幅が2~13%増加し、メモリレイテンシも約15%削減されている。DDR5-6000対応オーバークロックメモリのG.Skill F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRWはメモリタイミング「28-36-36-96」の低レイテンシメモリでもあるので、メモリレイテンシを大きく削減できたようだ。 □AIDA64 Cache & Memory Benchmark「キャッシュ性能」 AIDA64 Cache & Memory Benchmarkで、CPUが備えるキャッシュメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフ。 Zen 5アーキテクチャを採用するRyzen 9000シリーズはL1/L2キャッシュの帯域幅が強化されており、同じCCDを採用するRyzen 7 9800X3DもL1/L2キャッシュの帯域幅はRyzen 7 7800X3Dの2倍前後に増加している。ただ、第2世代3D V-Cacheを導入したL3キャッシュの帯域幅は大して変化しておらず、速度面での進化はないように見える。 □3DMark 3DMarkでは「Speed Way」、「Steel Nomad」、「Port Royal」、「Solar Bay」、「Wild Life」を実行した。 3DMarkではスコアが横並びとなっているテストがほとんどで、明確なスコア差が生じたのはGPU負荷が低いWild Life(無印)のみだ。 Wild LifeでRyzen 7 9800X3Dが記録したスコアは「155,099」で、Core Ultra 7 265Kを約8%、Core i9-14900Kを約8%下回り、Ryzen 7 7800X3Dを約8%上回った。 □ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、グラフィックプリセットを「最高品質」に設定して、3つの画面解像度でスコアと平均フレームレートを計測した。なお動的解像度(DLSS/FSR)については無効にしている。 メモリやキャッシュの性能が反映されやすいこのテストでは、CPUがボトルネックになりやすいWQHD/1440p以下の画面解像度でRyzen 7 9800X3Dが全体ベストを記録。Ryzen 7 7800X3Dを5~9%、Core Ultra 7 265Kを41~60%、Core i9-14900Kを20~30%上回った。 DDR5-6000動作時のRyzen 7 9800X3Dは、WQHD/1440p解像度以下でDDR5-5600動作時を2~3%上回っている。メモリがどの程度パフォーマンスに影響するのかはゲームタイトルによりけりだが、効きやすいタイトルではこのように性能を底上げする効果が得られるようだ。 □Forza Horizon 5 Forza Horizon 5ではゲーム内ベンチマークモードを使用して、グラフィックプリセット「エクストリーム」で3つの画面解像度をテストしたほか、フルHD/1080pでグラフィックプリセットを「中」に落とした高fps設定でのテストを行なった。 GPU性能がボトルネックになる4K/2160pではほぼ横並びの結果となっているが、WQHD/1440p以下の画面解像度と高fps設定ではRyzen 7 9800X3Dが全体ベストを記録。Ryzen 7 7800X3Dを1~3%、Core Ultra 7 265Kを5~31%、Core i9-14900Kを7~39%上回った。 □オーバーウォッチ 2 オーバーウォッチ 2では、グラフィックプリセットを「エピック」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のレンダースケールは100%で、最大フレームレートは600fps。 4K/2160pではほぼ横並びの結果となっているが、WQHD/1440p以下の画面解像度ではRyzen 7 9800X3DがRyzen 7 7800X3Dを1~3%、Core Ultra 7 265Kを7~12%、Core i9-14900Kを3~7%上回った。 □フォートナイト フォートナイトでは、NaniteおよびLumenを無効にした上でグラフィックプリセットを「最高」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測したほか、フルHD/1080pでグラフィックプリセットを「中」に落とした高fps設定での計測も行なった。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は全条件で100%に設定している。 描画設定「最高」でのRyzen 7 9800X3DとRyzen 7 7800X3Dはほぼ同等のフレームレートを記録。高fps設定ではRyzen 7 9800X3DがRyzen 7 7800X3Dを約8%上回った。 Intel製CPUとの比較では、描画設定「最高」のWQHD/1440p以上はほぼ横並びとなっており、フルHD/1080p以下の設定でCore Ultra 7 265Kを16~44%、Core i9-14900Kを20~47%上回った。 □エーペックスレジェンズ エーペックスレジェンズでは、グラフィック設定をできる限り高く設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、最大フレームレートは300fps。 DirectX 12版では、どのCPUもGeForce RTX 4090の性能を十分に引き出してほぼ上限フレームレートに張り付くという結果で横並びとなっている。 □サイバーパンク2077 サイバーパンク2077では、グラフィックプリセットを「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度でゲーム内ベンチマークモードを実行した。なお、テスト時はGeForce RTX 4090がサポートするDLSS 3のフレーム生成を有効化しているほか、DLSS超解像のプリセットをフルHD/1080pとWQHD/1440pで「クオリティ」、4K/2160pで「パフォーマンス」に設定している。 Ryzen 7 9800X3DはRyzen 7 7800X3Dとほぼ同等の平均フレームレートを記録。Core Ultra 7 265Kを9~33%、Core i9-14900Kを2~13%上回った。 □モンスターハンターライズ:サンブレイク モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、グラフィックプリセットを「高」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。 GeForce RTX 4090がほぼフルパワーで稼働する4K/2160pは横並びとなっているが、WQHD/1440p以下ではRyzen 7 9800X3Dが頭一つ抜けた平均フレームレートを記録。Ryzen 7 7800X3Dを17~20%、Core Ultra 7 265Kを40~42%、Core i9-14900Kを19~20%上回った。 □黒神話:悟空 ベンチマークツール 黒神話:悟空 ベンチマークツールでは、画質レベルを「最高」、フルレイトレーシングを「オフ」、フレーム生成を「オン」、サンプリング解像度を「100」に設定してベンチマークテストを実行した。 かなりGPU負荷の高い条件でテストしたこともあり、Core Ultra 7 265K以外のCPUが記録した平均フレームレートはすべての解像度で横並びとなっている。 □Microsoft Flight Simulator Microsoft Flight Simulatorでは、グラフィックプリセットを「ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測したほか、フルHD/1080pでグラフィックプリセットを「ミドル」に落とした高fps設定でも平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、アンチエイリアスを「DLSS/DLAA」、DLSSフレーム生成を「有効」に設定している。 3D V-Cacheの効果が大きいことで知られるMicrosoft Flight Simulatorでは、Ryzen 7 9800X3Dがすべての条件で全体ベストの平均フレームレートを記録。Ryzen 7 7800X3Dを4~14%、Core Ultra 7 265Kを39~61%、Core i9-14900Kを31~52%上回った。 ■ 消費電力とワットパフォーマンス ラトックシステムのワットチェッカー「RS-BTWATTCH2」を使用して、アイドル時の最小消費電力とベンチマーク実行中の平均消費電力と最大消費電力を計測。また、ベンチマークスコアを平均消費電力で割ることで求めたワットパフォーマンスを比較した。 以下のグラフはアイドル時の最小消費電力とCPUベンチマーク実行中の消費電力をまとめたもの。 Ryzen 7 9800X3Dのアイドル時消費電力は95.9Wで、Ryzen 7 7800X3Dの93.4Wより若干高い程度となっている。この数値は、Core Ultra 7 265Kの75.1WやCore i9-14900Kの73.4Wより20W以上高い数値となっているが、デュアルチップセット構成のX870Eチップセット搭載マザーボードはアイドル時消費電力が高い傾向があるため、純粋にCPUのアイドル時消費電力の差を反映した結果ではない点に注意したい。 CPUベンチマーク実行中の平均消費電力はRyzen 7 9800X3Dが241.8~327.3Wで、同じTDP 120WのRyzen 7 7800X3Dの171.8~244.7Wより70~80Wほど高い消費電力となっている。 ワットパフォーマンスをみてみると、Ryzen 7 9800X3DのワットパフォーマンスはRyzen 7 7800X3D比で81~90%となっており、CPU性能の向上と引き換えに電力効率自体は低下していることが確認できる。これは、第2世代3D V-Cacheによって熱伝導のボトルネックが改善され、より性能を追求できるようになった結果でもある。 ゲームベンチマーク実行中の平均消費電力はRyzen 7 9800X3Dが428.9~577.4Wで、Ryzen 7 7800X3Dの395.5~579.4Wより最大で33Wほど高い電力を記録することがある一方、GPU負荷の高いテストではほぼ同等の消費電力となっている。 Ryzen 7 9800X3DのワットパフォーマンスはRyzen 7 7800X3D比で98~101%となっており、ほぼ同等と言える結果だ。すべてのCPUコアから最大限に性能を引き出そうとすればRyzen 7 7800X3Dより大きな電力を消費するRyzen 7 9800X3Dだが、ゲームのような中程度の負荷であれば電力効率は大差ないものとなるようだ。 ■ Cinebench 2024実行中のモニタリングデータ HWiNFO64 Proを使って計測したCinebench 2024「CPU(Multi Core)」実行中のモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフ。テスト時の室温は約25℃。 Ryzen 7 9800X3DのCPU温度は平均80.4℃(最大82.6℃)で、CPU消費電力は平均140.5W(最大146.3W)。リミット値の95℃や162Wには達しておらず、CPUクロックは平均5,155MHzで動作している。 Ryzen 7 7800X3Dが平均82.3W(最大84.8W)という消費電力でありながら、CPU温度が平均76.5℃(最大78.4℃)に達していることと比べると、第2世代3D V-Cacheの導入による冷却性の改善効果はかなり大きなものであることが伺える。 ■ FF14ベンチマーク実行中のモニタリングデータ HWiNFO64 Proを使って計測した「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(フルHD/1080p、最高品質)」実行中のモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフ。テスト時の室温は約25℃。 Ryzen 7 9800X3DのCPU温度は平均51.3℃(最大56.1℃)で、CPU消費電力は平均70.5W(最大86.7W)。リミット値の95℃や162Wには達しておらず、CPUクロックは最大ブーストクロックの5,200MHzに近い平均5,196MHzで動作している。 GPU消費電力に注目してみるとRyzen 7 9800X3Dは平均253.3Wとなっており、Ryzen 7 7800X3Dの平均236.0WやIntel製CPUより明らかに大きな電力を消費している。これはGPUがより大きな電力を消費して高い性能を発揮したことを示すもので、実際にこの条件では比較用CPUを明確に上回るスコアを記録していた。 ■ iGPU使用時のパフォーマンスをチェック 最後に、CPUに統合されているGPU(iGPU)のパフォーマンスをチェックする。 テストに使用する機材は以下の通りで、基本的には先のベンチマーク環境を流用している。なお、Ryzen 7 9800X3Dにはレビュアー向けドライバ「Adrenaline 24.10.34」を導入している。 Ryzen 7 9800X3DのIODに統合されているRadeon Graphicsは、ハードウェア的にはRyzen 7 7800X3Dと同じRDNA 2世代の2コアGPUであり、性能に関してもほとんど変わっていない。 DDR5-6000メモリを使用することでGPU性能が多少向上している様子も見られるが、ゲームでのパフォーマンスを期待するレベルにはなく、Xe-LPG世代のGPUコアを備えるCore Ultra 7 265Kに大きな差をつけられている。 いずれにせよ、強力なビデオカードと組み合わせて利用することが想定されるRyzen 7 9800X3Dにおいて、iGPUの性能を気にする必要はないだろう。 ■ CPUコア自体の性能が大きく向上したゲーマー向けCPU Ryzen 7 9800X3DはZen 5アーキテクチャと第2世代3D V-Cacheの導入によって、CPUコアの性能をRyzen 7 7800X3Dから大きく向上させている。 そのCPU性能は8コア/16スレッドCPUとしては最高峰であり、CPUボトルネックが生じやすい条件においてRyzen 7 7800X3Dを上回るゲーミング性能を実現するだけに留まらず、オフィスソフトやクリエイティブアプリでも上々のパフォーマンスを発揮してみせた。 純粋なCPU性能だけを見ると費用対効果の高いCPUとは言いがたいが、より高いフレームレートでゲームをプレイすることを望むゲーマーやエンスージアストにとって、Ryzen 7 9800X3Dは最上級の選択肢となるだろう。 最強ゲーミングCPU「Ryzen 7 9800X3D」の実力をライブ配信で目撃せよ【11月6日(水)23時開始】(Sponsored) Zen 5と第2世代3D V-Cacheでより強力になったRyzen 7 9800X3Dを“KTU”加藤勝明氏がライブ配信でレポートします。多数の実ゲームを含むベンチマーク結果解説やいち早い実動デモもあります。スペシャルゲストとして日本AMDの佐藤美明さんも参戦!
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