無許可の副業で約2億円。20代職員が風俗店勤務…国税さん、最近ちょっと不祥事が多くないですか?
なぜか「若手職員」の間で……
性の不祥事も頻発している。東京都内の税務署に勤務する24歳の女性職員がホストクラブでの飲食代を捻出するため、'21年4月から約1年間、都内外のソープランドやデリバリーヘルス8店舗で合計165日働き、約826万円の収入を得ていたことが発覚('22年12月に懲戒免職)。 さらには20代の女性職員3人がホストクラブの飲食代やブランド品の購入費を稼ぐため、'22年から'23年にかけてソープランドで働いたり、いわゆる「パパ活」を行ったりしていた('23年12月に停職1~3ヵ月となり依願退職)ことまで……。 若者にありがちな不祥事と言ってしまえばそれまでだが、血税を扱う国税局の職員には、一般の社会人より高い「鉄の規律」が求められることはいうまでもない。「以前なら考えられなかったようなことばかりが起こるようになった」と嘆息しながら、不祥事の背景について説明するのは50代後半の国税幹部だ。 「国税職員の給与水準は国家公務員の中ではマシなほうですが、民間と比べると決して高くない。物価高騰の中、それに見合うほど給与が引き上げられる気配もないため、おカネ欲しさに副業や犯罪まがいの行為に手を染めてしまうケースはあるでしょう。 ただ、最近の若手職員の不祥事については、コロナ禍の影響が大きいと感じています。というのも'20年3月に始まったコロナ禍で、われわれ国家公務員は『仕事のあとの軽く一杯』を厳しく制限されてしまいました。その結果、職員間に必要なコミュニケーションが失われ、若手職員の教育が行き届かなくなってしまったのです」
秘伝を受け継ぐ場所が
実は国税職員の間では、「飲みの席」が教育の場として一般の職場以上に重視されていたという。 「世の中に流れる様々な情報をもとに調査対象を選んだり、確定申告書や帳簿類を眺めながら不審な点を見つけ出したり、納税者が隠している資産を探し出したりして徴税するのが国税職員の仕事です。そのために必要となる「職人芸」は、国税局や税務署の建物の中よりも、勤務時間後の飲み会の席で先輩から後輩に受け継がれていくものでした。 われわれには重い守秘義務があり、周囲の客に国税職員とバレるわけにもいかない。だから仕事の話をする時は小さな居酒屋に少人数で固まり、仲間内だけで通じるトコロ(所得税)やサンズイ(法人税)といった隠語を使いながら小声で話し合うのです。そうして生まれる一体感の中で、若手職員は先輩から国税職員としての心構えや『やってはいけないこと』を教わる。われわれの若い頃は仕事が終わればこちらから先輩を飲みに誘い、奢ってもらいながら仕事のやり方を教えられ、規範を守る意識を植え付けられました。国税の現場の風土はそういうものでした」 それが、平成の終わり頃から個人主義的な考え方が若い世代に浸透し、勤務時間後に上司や先輩から飲み会に誘われても平然と断る若手の国税職員が増えてきた。 それでもコロナ禍以前はこうした職員はまだ少数派で、一度は断っても「次回は必ず行きますのでぜひ誘って下さい」と答える「中間派」が圧倒的に多かったという。 「ところがコロナ禍が終わっても、若手職員の間に『勤務時間後に先輩や上司から飲みに誘われても、行かなくてよい』とする風潮が定着してしまった。長年培われてきた現場の風土が短期間でここまで変わってしまうことは、まったくの予想外でした」(同) 後編記事『給付金詐欺総額2億円に大麻所持… 国税さん、最近若手の不祥事がちょっと多くないですか? 』へ続く。 「週刊現代」2024年11月9日号より
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