志尊淳インタビュー「求められた役に全力で取り組む。10年抱えていた気負いは消えました」
気負いが消えて、仕事もプライベートも自然体に
──映画にドラマと忙しい日々が続いていますが、プライベートの過ごし方や気分転換はどのように? 「学生の時のようにカラオケに行ったり、卓球したり、ボーリングしたり。友達と他愛もない普通のことをして息抜きしています。実は今まで、そういう時間の過ごし方はしてこなかったんです。それが最近、芸能界以外の友達も増えたので、10人ぐらいで大衆居酒屋に行ったり、個室じゃなくて普通の席で飲んだりしています」 ──ファンの方から声をかけられませんか。 「そしたら『こんにちは』って普通に挨拶しますよ。今までは、周囲の目が怖くてそういうことも出来なかったんです。あまり外に出掛けたりもしなかったんですが、友達が、ほら、行こうよって引っ張り出してくれて。みんな、僕のことを“俳優”の志尊淳じゃなくて、僕個人として見てくれるんです。地元のご飯屋さんに行くと、お店の人も最初は“あの俳優の”となるんですが、最終的にはみんな仲良くなって。そんな時間が大切なんです。考えてみたら、僕も別に悪いことをしてるわけじゃないから、隠れる必要はないんですよね」 ──最近はひとりの時間も楽しんでいらっしゃるそうですね。 「部屋で台本を読んだり、家事をしたり、特に何をしようとも決めないで、家から一歩も出ずに過ごす。それが心地いいんですよ。作品に入ると、どうしても仕事だけになるから、そうじゃないときは息抜きしないと。遊びたくなったら遊ぶし、ひとりで過ごすこともある。そんな感じです」 ──オフとオンの切り替えは意識しますか。 「意識したことはないですね。演じている役にもよって、日常でも引きずってしまうものもあるし、どうしても仕事のことはずっと考えているので、それは仕方ないと思うようになりました」 ──今回の岡田安吾も、志尊さんの中に今でも残っていたりしますか。 「どこかには残っていると思います。でも、僕としては撮影中に出し切ったので、もう1回演じようとしても出来ないかもしれません。撮影が終わったときに、成島監督からちゃんと役を落としなさいと言われたんです。僕らの仕事は、1つの作品が終わると次の役が待ってるんです。次に行かなくちゃいけない」 ──オフの時間に、映画やドラマを見てインプットしたりしますか。 「そういう時期もあったけど、他の作品から受け取るよりも、演じる役に向き合えるだけ向き合おうと考えるようになったので、意識的に映画やドラマを見るということは少なくなりました。視聴者のひとりとして、気になるものを見るぐらいですね。 取材でも役作りに関して質問されることが多いんですけど、本当にそのときによります。シェフの役の時は料理に必死に向き合って、家でも料理をするし、料理の専門家の方から料理の工程を学んだり、意識的にレストランに行くようにして、自分の身近なものにしていく作業をひたすらしていました。その作品が終わったら、次の役にまた真剣に向き合っていくという。プライベートと仕事が混在しているから、オフで特別な趣味をあまり持たないというところもありますね」 ──今年から環境も一新しましたが、仕事に対する姿勢に変化は? 「以前は、いつも『どうしてもこの作品のこの役がやりたいんです!お願いします!』という気持ちだったんですが、求められたことに自分なりに応えていくことが、クリエイティブだと考えるようになりました。オファーしてくださる方も、この作品を作る上では絶対にこの人だと思って声をかけてくださるので、そこに全力で応えていく意識で仕事をしようと思っています。これまで10年ぐらい、ずっと気負っていたんです。とにかくこれがやりたいんだ!と、仕事の欲に取り憑かれていたような気持ちでした。でも、コロナ禍と病気を経て、いつの間にかその気負いが溶けていったと思います」 衣装 ジャケット ¥412,500 ベスト ¥159,500 タートルネック ¥187,000 パンツ ¥198,000 ベルト ¥64,900 靴¥137,500/すべてGucci(グッチ クライアント サービス 0120-99-2177) Photos: Yu Inohara Hair & Makeup: Jun Matsumoto(tsujimanagement) Styling: Kyu(Yolken) Interview & Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto
Numero TOKYO