AI時代に必要となる能力--技術スキルとともに重視されるヒューマンスキル
AIアプリケーションを構築する能力だけでなく、AIベースのツールを使用して作業を遂行し、成果を出す能力も重要だ。 「AIを日々の業務で使用し、そのようなツールを有効活用して、品質やチームの効率の向上に貢献できるエンジニアを求めている」とLanehart氏。「その理解の深さと使用経験の豊富さこそが、中級レベルのエンジニアと上位の役割を分けるものだ」 しかし、経営者は、かつては盤石だったテクノロジースキルの先を見据えている。「われわれが求めている現代のスキルセットは、過去に求めていたものと大きく異なる」(Lanehart氏) 以前の技術職の採用基準は、「その人は『Python』でコーディングができるのか。コードをコミットできるか。コードをプルできるか」だったとLanehart氏は説明する。「現在知りたいのは、Copilotのようなツールを使用してコードを改善できる人か、あるいはコード作成の高速化や効率化ができる人かどうか、という点だ。チームには、AIツールを使って多様なテストケースを生成してもらいたい。品質保証エンジニアには、AIによってさらに徹底的な評価をしてほしい」 ビジネススキルと基本的なテクノロジースキルの組み合わせが、経営者にとって極めて重要だ。「コーディングスキル、モバイル、デジタル、バックエンド、機械学習を切り捨ててはならない。これらには引き続き需要があるだろう」とJPMorgan ChaseのHaus氏は述べた。他にも次のようなスキルの需要があるという。「データ、クラウドコンピューティング、ソフトウェアエンジニアリング、顧客体験、デジタルデザイン、製品管理などだ。AIと生成AIには、それらのスキルがさらに必要になる」 AI時代の仕事には、実績あるビジネススキルとキャリアスキルも求められており、これには「好奇心、共同作業、顧客の問題解決への取り組み」などがある、とHaus氏は続ける。また、Chaseでは「ソフトウェアエンジニアリングの経験を持つテクノロジストの雇用」を実践しているという。 しかし、Chaseでソフトウェアエンジニアリングの仕事に就くために、大学のコンピューターサイエンスの学位が必要というわけではない。「決断力、回復力、適応力など、多種多様なスキルを評価している」とHaus氏。「顧客固有のニーズに応える解決策を生み出すというチームの能力が、拡大したことがある。それは喜ばしい経験だった」 重要なことだが、AIだけでは解決策を提供できない。それが可能かどうかは、AIを使う人間次第だ。「アプリケーションに関する要望をChatGPTのようなものに余さず伝えて、すべてのコードを生成させるには、ツールとその機能をある程度理解していなければならない」とLanehart氏は述べた。「それを達成するには、テクノロジーを全面的に受け入れて、身を投じ、学習してビジネスに応用するしかない」 JPMorgan Chaseは、このような新しい要件の一部に2つのイベントで対処している。その1つが、エンジニアによるエンジニアのためのカンファレンス「DEVUP」であり、これは「職務横断、アイディエーション、知識共有を重視している」とHaus氏は述べた。2つ目のイベント「AI Summit」では、「従業員が集まって、新しい研究やAIとMLのユースケースについて議論し、イノベーションを全社で推進する」 AIの導入を成功させるには、「人材がAIの機能を熟知し、最も効果的な活用方法を理解しなければならない」とSanders氏とWood氏は指摘する。「だが、AIは進化するテクノロジーであるため、システムに余裕を持たせて、学習の機会を確保する必要がある。導入の際には、『深い仕事』と『浅い仕事』を区別して、後者をAIに割り当てることも必要だ。ただし、深い仕事に関しては、従業員をトレーニングして人材リテラシーを開発しなければならない」 この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。