電気で走る“ゲレンデ”の凄さとは? 新型メルセデス・ベンツG580 with EQ Technologyに迫る
日本に上陸した、BEV(バッテリー式電気自動車)のメルセデス・ベンツ「G580 with EQ Technology」について、サトータケシがリポートする。内燃機関搭載モデルとの違いに迫った! 【写真を見る】新型G580 with EQ Technologyの内外装などの細部(58枚)
重要なポイントは“オフロード性能”
ここ数日、会う人会う人にスマホで撮った新しいGクラスの動画を見せている。クルマ好きの友人知人は例外なく、「マジか!?」、「すげぇ!」と、驚嘆する──。 すでに報告しているように、メルセデス・ベンツのGクラスにBEVの「G580 with EQ Technology」が加わった。 では、電気で走る“ゲレンデ”のなにがスゴいのか? 発表会後、行われたワークショップで、このGクラスのプロダクトマネージャーを務めるトニ・メンデルは、「このクルマで最も重要なポイントは、オフロード性能です」と、断言した。 BEVの利点は、走行中にCO2を排出しないことや、滑らかな加速と静粛性の高さだ。4輪それぞれにモーターを配置、4つのモーターを個別に制御するこのクルマは、そうしたストロングポイントに加えて、いままで不可能だった動きを可能にしたという。 百聞は一見にしかず。早速、G580の「G-TUNN」という機能を“実演”してもらう。これは、左右のタイヤを逆回転させることで、車体の中心を軸にして方向転換できるというもの。ブルドーザーやショベルカーなどの履帯を備える車両の超信地旋回に似た動きを想像してもらえたらわかりやすいと思う。 はたして、G580はその場で2回転、720度旋回して止まった。1回転は4秒、2回転で8秒。想像していたより、回転速度が速くて驚く。確かに、いままでに見たことのないクルマの挙動だ。 たとえば、狭い未舗装路を進んで、前方が倒木やがけ崩れで行き止まりになっている場合などにこの機能が役立つという。ドライバーによると、インパネの「OFFROAD COCKPIT」と呼ばれる一角にある「G-TUNN」のスイッチを押し、パドルを引き、アクセルペダルを踏むと回転が始まり、戻すと回転が止まる。ただし、アクセルペダルを踏み続けても最大で2回転すると停止するとのこと。 ただし、この機能は公道で使用することはできない。前出のメンデルによれば、「あくまでオフロードの緊急事態に対応するための技術であり、ショッピングモールの駐車場で披露する機能ではありません」とのことだ。 同じような原理の「G-STEERING」という機能も備わる。これは、4つのモーターのトルクを個別にコントロールすることで、後輪軸を中心に旋回するというもの。結果として回転半径を縮小することができ、オフロードの急カーブでもステアリングホイールを切り返さずに曲がることができる機能だという。ただし、この機能も公道で使用することはできない。 こうしたオフロード専用の機能を使わなくても、ユーザーは4輪独立モーターの恩恵を受けるという。滑りやすい路面では、4輪それぞれに瞬時に適切なトルクを配分することで、グリップを確保する。ドライ路面のワインディングロードでも、コーナーに対して外側のタイヤにトルクを加え、内側のタイヤのトルクを弱めることで、曲がりやすくなる。トルクベクタリングと呼ばれるこうした機能はエンジン車にも備わるけれど、モーターのほうがはるかに素早く、正確にトルクをコントロールできるという。 ちなみにGクラスの伝統を守るためにあえて外観には手を加えず、ルックスは3.0リッターの直列6気筒ディーゼルターボを搭載する「G450d」をほぼ同じ。フロントのグリルとフェンダーは共通だという。じっくり観察すると、エンジンフードとリヤフェンダーは空気の流れを整えるために少し形状を変更していることがわかる。また、ボディ床下に積むバッテリーを保護するために、アンダーボディプロテクションが追加されている。 インテリアのレイアウトもエンジン仕様と共通で、床下にバッテリーを積むために、フロアは1.5cm高くなっているというが、これに気づく人は稀だろう。 この日はステアリングホイールを握ることはできなかったけれど、電気で走るゲレンデのポテンシャルの一端を垣間見ることができた。実際に、この走りを体感する日が待ち遠しい。
文・サトータケシ 編集・稲垣邦康(GQ)