草笛光子×市村正規「歌と踊りと芝居を結婚させるのがミュージカル。その3つがちゃんとできる人とご一緒すると、何度も共演したような気がしちゃう」
◆いくつになっても自分を磨き続けて 市村 僕はその後、西村晃さんの付き人になって、劇団四季に入って。退団後まもなく『ミス・サイゴン』に1年半出た次の次の舞台が、『ラ・カージュ・オ・フォール』だった。 草笛 ああ、私たちはそのときはじめて会ったのね。 市村 そうです。草笛さんと共演できるなんて、本当に感無量でしたよ。 草笛 私は、こわかった。 市村 どうして? 草笛 だってあなたは歌も踊りも芝居も、全部点数を持っている人だから。 市村 それは悪いことしたね(笑)。僕に言わせりゃ、映画界のトップ女優だったころの草笛さんはやはり「作られた」存在で、『ラ・マンチャの男』以降が真骨頂だと思う。でも残念なことに、草笛さんの『シカゴ』は観れていないんだよね。
草笛 『シカゴ』もニューヨークで観て、ぜひやりたいと思った作品。終演後に楽屋にうかがって、ミュージカル界の女王と言われていたチタ・リヴェラさんと親しくなったの。 市村 チタとは、のちに僕もチタちくなったよ。(笑) 草笛 19歳ではじめてミュージカルに出合って以来、毎年ニューヨークに観に行っていたほど、一時期はミュージカル漬けの生活だったわね。ときどき、あのころの自分に戻りたいと思うことがある。とことん、ひたむきだった自分に。 市村 僕は小学校のころの自分に戻りたいけどね。 草笛 どうして? 市村 一番気楽な時期だったから(笑)。それに、遊ぶことに忙しかった。僕、忙しくしているのが性に合ってるんだよ。 草笛 でも、「あのころに戻りたい」なんて思う一方で、「いいえ、いまが大事」とも思うわけ。あなたもそうよ。いまやれることを一所懸命やらなきゃ。 市村 一所懸命やってるよ。毎日トレーニングしてるし、今日だって、草笛さんに会う前にヨガに行ってきたし。だって食って飲んで寝てるばっかじゃ、舞台には立てないでしょう。 草笛 何歳になっても、自分を磨き続ける。それはとっても尊いことね。 (構成=篠藤ゆり、撮影=天日恵美子)
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