大好きな和栗で能登を守れ! 地震で栗農家断念の男性がノウハウを活かし移住先から仲間を支援【静岡発】
能登半島地震で被災し栗農家を断念せざるをえなかった男性が、移住先から仲間を救おうと張り切っている。長年培った栗栽培のノウハウが見込まれ、静岡県内の和栗ブランド化を目指すプロジェクトに参加することになったのだ。 【画像】能登地震で栗農家断念の男性が移住先から仲間を救う
地震で自宅兼作業場が全壊
15年前から石川県輪島市で栗園を営んできた松尾和広さん(50)。 糖度の高い焼き栗は地元でも評判の味だった。 しかし、2024年元日に能登半島を襲ったマグニチュード7.6の地震が松尾さんの人生を一変させた。 地震発生時に自宅の玄関にいた松尾さんは「ガシャンガシャンと音が聞こえてくるんですよ。裏の物置小屋に仕事道具などを入れてある食器棚があったのですが、それが倒れてきているような音が」と恐怖の瞬間を振り返る。 幸いにして家族は全員無事だったが、商売道具である農機具などをしまってあった自宅 兼 作業場は全壊した。
復旧に1億円以上「終わったな」
農機具などを買いそろえるのに2000万円、作業場を作り直すのに1億円以上かかると聞いて、松尾さんは「投資としては厳しいな。無理だな、終わったな」と思ったという。 栗園自体は栽培を続けられる状態だったが、作業場の復旧が困難である以上、大好きな栗農家としての再出発はあきらめざるを得ず、一家での移住を決意した。 松尾和広さん: 家族全員が安心して暮らせる環境を探す方が大事、自分の栗とかにはこだわらずに。これは仕方ないなと思った
親交ある菓子メーカーから誘い
こうした中、松尾さんのもとに舞い込んだ1件の依頼。 以前から親交のあった浜松市の菓子メーカー「春華堂」が遠州地域で採れる和栗のブランド化に取り組むプロジェクトを立ち上げることになり、松尾さんに参加を呼び掛けた。 松尾さんはプロジェクトに参加することを決意し、浜松を移住先に選んだ。 松尾和広さん: 栗の仕事が引き続きできるということで、まだまだ能登では仕事を失った人がいっぱいいるので(恵まれた環境で)すごく感謝しています
能登栗の買い取りで復興支援
松尾さんは現在、栗の栽培に適した候補地の選定を担当しているほか、これまでに培った技術や経験を参加している企業や農家に伝える役割を担っている。 プロジェクトを立ち上げた春華堂の飯島美奈 部長も「新しく今までなかった技術や知見が加わるので、より一層、掛川を中心とした遠州地域、県全体で栗の産地化に向かって大きく動き出すのでは」と期待を寄せる。 また、松尾さんの栗園を含む輪島で採れた栗は新たな加工品の開発や復興支援の一環として、このプロジェクトが買い取ってくれることになった。