2つの短歌に見る津波巨大想定受けとめ方の違いは? 矢守克也・京都大学防災研究所教授
津波犠牲者、変化を積み重ねれば減らすことができる
最後に種明かしをしておきたい。2首の歌、実は、同じ一人の人物によって歌われたものである。作者は、黒潮町に暮らす秋澤香代子さん(82歳)。当初、巨大な想定にあきらめの気持ちを隠せなかった秋澤さんだが、周囲の働きかけ、役場の防災へのとりくみによって、文字通り「変わった」のである。 ご家族の話によると、「前の歌を書いて以降、気持ちに変化があった」とのことで、今は、「今年82歳、先は見えて居りますが、命は大切に守って行きます」と力強く語っておられる。今年3月におきた伊予灘地震の際も、しっかり避難されたとのことである。 数万人にのぼるとの想定もある巨大津波による犠牲者であるが、こうした変化を積み重ねていけば確実に減らすことができる。 (矢守克也/NPO法人日本災害救援ボランティアネットワーク理事) ■矢守克也(やもり・かつや) 京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授。同阿武山観測所教授、人と防災未来センター上級研究員などを兼務。博士(人間科学)。専門は防災心理学。著書に「被災地デイズ」、「巨大災害のリスク・コミュニケーション」など。開発した防災教材や訓練手法に「クロスロード」、「個別避難訓練タイムトライアル」など