戦争の愚かさを伝える名作『戦場にかける橋』
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。 【水先案内人 高松啓二のおススメ】 初見はTVだったが、後にリバイバルで観て大画面の迫力に圧倒された。ちょっと気になったのはアレック・ギネスの英国軍指揮官ニコルソンの階級だ。初回TV(久米明の吹き替え版)では中佐だったが、DVDの字幕や文字表記では大佐になっている。検証してみると橋の完成時のプレート(イラスト参照)にはLt.Col. L.NICHOLSONと彫られておりL.ニコルソン中佐となる。また、肩章も王冠に星一つは中佐の階級章である(イラスト参照)。 ちなみにプレートのD.S.O COMMANDINGは殊功勲章を授与された指揮官という意味だ。多分エンドクレジットのColonel=大佐表記に沿ったのだろう。劇中に兵士達が彼をOld manと呼ぶが英米軍隊での隊長の俗語である。 一方、日本軍側の早川雪洲扮する斉藤は大佐。彼がニコルソンをジュネーブ条約の写しでひっぱたくのは、捕虜の分際で自分より格下階級に意見されたから激昂したのかも? ウィリアム・ホールデンのシアーズは複雑だ。米海軍中佐=Commander(軍の階級は国や陸軍、海軍などの所属で呼称が異なる)で登場するが、実は二等水兵=Swab jockey second classで捕虜時に上官の服を着たなりすましだった。その後、英軍コマンド部隊に編入され少佐=Major待遇となる。そのコマンド316部隊の隊長ウォーデン(ジャック・ホーキンス)も少佐である。軍隊や橋の建設に懐疑的な軍医のクリプトン(ジェームズ・ドナルド)は、おそらく少佐(王冠一つの肩章だった)。 本作は苦労して建設した橋を味方に爆破されてしまう戦争による愚かな結果となるが、軍隊の階級もシアーズの存在で曖昧になるのも面白い。原作は『猿の惑星』のピエール・ブール。実話をベースにしているが、フィクションである。映画では特徴的な木造構造の橋であるが、実際はコンクリート土台の鉄橋で爆破されず現在は観光地になっている。 <作品情報> 『戦場にかける橋』 午前十時の映画祭にて上映 グループA:2025年1月31日(金)~2月13日(木) グループB:2025年2月14日(金)~2月27日(木) 原作:ピエール・ブール 監督:デヴィッド・リーン 出演者:ウィリアム・ホールデン、アレック・ギネス、ジャック・ホーキンス、早川雪洲