物価高が続いていますが……令和6年度の年金は増えるの? 減るの?
公的年金は、インフレに強いといわれています。その理由は、物価の変動率に応じて年金額が調整される仕組みになっているからです。物価高が続いている昨今ですが、令和6年度の年金は増えているのでしょうか? 今回は年金額改定の仕組みの解説を踏まえ、厚生労働省が発表した令和6年度の年金額について確認していきます。
年金額改定の仕組み
個人が任意で加入する私的年金の年金額は、年金保険であれば一般的に契約時の予定利率で、投資型の個人年金であれば運用益に応じて決まるため、物価高によって年金額が変わることはありません。 公的年金は私的年金とは違い、原則として物価などと連動して年金額が調整される仕組みとなっています。賃金や物価が上がった場合は年金額が増えることになるので、モノやサービスなど物価の上昇が続くインフレ時に強いといわれることがあります。 その一方で、少子高齢化時代において制度を安定的に持続させるため、賃金や物価の伸びよりも給付を抑える仕組みとして「マクロ経済スライド」が導入されています。 ●年金額改定 公的年金の年金額は、物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて、年度ごとに改定が行われることになっています。 この際、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合には、年金制度を支えている現役世代の負担能力に応じた年金給付とするために、名目手取り賃金変動率を用いて年金額を改定することが法律で定められています(※1)。 ●マクロ経済スライド 持続可能な公的年金制度の構築と、制度に対する信頼性の確保を目的として、平成16年(2004年)に大幅な制度改正が行われました(※2)。この改正の大きな柱として採用されたのが、マクロ経済スライドの導入です。 マクロ経済スライドは、年金制度を支える力と給付のバランスを取る仕組みで、賃金や物価による改定率から「スライド調整率」(公的年金制度の被保険者数の減少率と平均余命の延びに応じて算定)を差し引くことにより、年金の給付水準が調整されます(※3)。 賃金・物価の上昇率が大きい場合でのマクロ経済スライドによる調整、年金額の改定は図表1のようになります。