本郷和人『光る君へ』藤原のトップたちが「関白」の職をめぐって争うのも仕方ない!? その役割は<天皇の補佐>どころか…
大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。第十九話は「放たれた矢」。道長(柄本佑さん)が右大臣に任命され公卿の頂点に。これを境に先を越された伊周(三浦翔平さん)との軋れきが高まって――といった話が展開しました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。今回は「関白」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし! 本郷奏多さん演じる花山天皇に入内した井上咲楽さん演じるよし子は、そのまま「夜御殿」で…ってそもそも「入内」とは? * * * * * * * ◆関白をめぐって ドラマ内にて道隆・道兼兄弟が疫病で相次いで死んだことで、空いた関白の職。 いろいろあって、一条天皇は道長に関白の職を与えることを決意しましたが、道長側が「関白になると自由に動けなくなる」と断ってしまいました。 ききょうからは「人気も無い上、権勢欲もなさそうだし、道長様が関白になるのは無理」とまで言われる始末ですが、はたして… そうしたドラマの展開を踏まえて今回は、そもそも関白とはどういうもので、朝廷において、どのように意思の決定が行われるかについて、説明しましょう。
◆朝廷の意思とはつまり<天皇の意思> まず、もっとも重要なことですが、朝廷の意思とは、朝廷のトップに立つ<天皇の意思>に他なりません。 では天皇はどのようなときに意思を表明するのかというと…。 自発ではなく、受け身。 自ら社会の問題点を探すことはせず、誰かが天皇の判断を求めたときにのみ、それに応えるかたちで決定を下すのです。 天皇の意思は、側近くに仕える<蔵人>へ伝達されます。 蔵人は蔵人所を形成する実務官。2人の蔵人頭がリーダーで、部下には五位の蔵人や六位の蔵人などがいます。政務に携わるのは、蔵人頭と五位の蔵人です。 かれらは天皇の意思を<上卿>に伝えます。 上卿は「しょうけい」と読む。大臣、大納言、中納言、参議から成る上級貴族のうち、1人がその一件を担当して、上卿を務めます。大臣、大納言、中納言、参議は全部で30名とか40名の規模です。現在の大臣にあたるとイメージして下さい。
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