ゆったりorがっしり? ハンドルで変わる自転車の乗り心地
より自分好みの走りとするために
一度乗れるようになってしまえば、とくに意識をしなくても操作できてしまう自転車ですが、さらに上手に心地よく乗ろうと思っても、誰かが乗り方を教えてくれるわけでもなく、また、それぞれによって好みも変わってくるため、結局は自分自身で極めるのみ……。そこで、自転車の構造や仕組みについて理解を深めることで、何かのきっかけとなるかもしれません。 【画像】「えっ…!」これが様々な種類がある「自転車のハンドル」です(5枚)
クルマやバイクに比べて圧倒的にシンプルな構造を持つ自転車は、大まかに言うと骨格となる「フレーム」、走行に必要な「車輪」、操作に必要な「ハンドル」、駆動部である「ドライブトレイン」、そして停まるための「ブレーキ」という5つの構造によって基本的な「走る・曲がる・停まる」が行なえます。 そのいずれについて何となくの知識はあると思いますが、言われてみると意外と知らなかったことがあるかもしれません。そこで、今回は自転車の基本構造の中から「ハンドル」と「サドル」の関係に注目してみたいと思います。 自転車を操るために必要な「ハンドル」は、さまざまな形状や材質がありますが、基本的には1本のパイプから作られています。前輪と繋がるフロントフォークに固定され、フロントフォークを介して直接前輪を操作することができます。それだけでなく、ブレーキや変速機を操作するためのレバー類や、警音器(ベル)やライト、その他のアクセサリーを取り付ける場所としても使われています。 そして忘れてはいけないのが、ハンドルは運転手が自転車を漕ぐ際に上半身を支える拠り所になっているという点です。とくに坂道を登るときやスピードを出したい時など、全身の力を効率よく伝えるためには上半身をいかにうまく使うかが重要になってきます。そのため、自転車のハンドルには用途に合わせて様々な種類が存在します。 あまりに種類が多いので全てを説明をするのは難しいところですが、乱暴な分け方をすると、握った時に「サドルにしっかり体重を預けるタイプ」と、「ハンドルに預ける体重を増やすタイプ」の2種類があります。 身近なシティサイクル(ママチャリ)で見ると前者となり、「アップハンドル」などと呼ばれる手前側にグイッと曲がった形状が特徴です。このタイプは背筋が伸びてサドルにゆったりと腰掛けて安定感のある乗車姿勢になり、あまりスピードを出さなくてもふらつかない特徴があります。 ただ、その安定感ゆえにペダルを漕ぐ力がダイレクトに伝わらず、スピードが出しにくいというデメリットもあります。 後者のハンドルとしては、真横に伸びた「フラットハンドル(オールラウンダーハンドル)」などがその代表格になります。肩幅よりも少し広げたところで腕を伸ばしてがっしりハンドルを握ることになるので、乗車姿勢は少し前傾となり、ペダルを漕ぐ力をロスなく駆動部に伝えることができるようになります。 ただ、腕で体重を支える割合が多くなり、腕力でハンドルを押さえつけるという場面もあるので乗り手を選ぶという側面も持っています。 なお、アップハンドルもフラットハンドルも、あくまでそのタイプの総称として使われていることが多く、ハンドルの曲がり具合で呼ばれ方がいろいろ変わります。 例えばアップハンドルのなかでも極端に立ち上がった形状のハンドルは「カマキリハンドル」と呼ばれ、微妙に角度のついたフラットハンドルは「トンボハンドル」などと呼ばれます。 ちなみに、正式名称ではないですが、カマキリほど急ではない、緩やかにカーブを描いたセミアップハンドルがその触覚に見えたのか「ゴ○ブリハンドル」と呼んでいる地域もあるそうです。なぜか自転車のハンドルは昆虫に由来するものが多い気がします……。 話を戻して、スポーツタイプの自転車は、基本的には「ハンドルに預ける体重を増やすタイプ」がメインになっています。例えばロードバイクなどで使われている下側にグルんと曲がっている「ドロップハンドル」は、フラットハンドルよりもさらに下の位置を握ることでより前傾姿勢になり、スピードが出せるようになります。疲れてきたら上部のまっすぐな部分を握り、フラットハンドルのような乗車姿勢を取ることもできます。 かなりざっくりとした説明になりましたが、自転車のハンドルが変わると乗車姿勢が変わり、乗り心地に大きな影響を与えることになります。 脚力に自信はあるのに気持ちよく自転車が進まない、もしくは、運転していても妙にふらつくと感じている場合は、ハンドルが自身の好みに合っていないのかもしれません。 自転車のハンドルは角度や高さなどを自分好みに細かく調整することもできますし、思い切って交換することも可能です。自分好みのハンドルと出会うために、意識して乗ってみてはいかがでしょうか。
史(ちかし@自転車屋)