日本人の「弾道ミサイル」への危機意識が低いという「危うい実態」
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
北朝鮮のミサイル発射「過去最多」
2022年、北朝鮮は過去に例のない頻度でミサイル発射を繰り返した。この年のミサイル発射は37回と過去最多で、我が国の安全保障上の脅威は目の前にあることを物語る。国民の不安を増長したのは、5年ぶりに発出された全国瞬時警報システム(Jアラート)だった。 2022年10月4日午前7時22分ごろに発射された北朝鮮の弾道ミサイルは、過去最長の約4600キロを飛行した。Jアラートは5分後に発出されたが、避難すべき対象地域が二転三転。青森県に警報が出たとき、ミサイルは同県上空を通過していた。 初めてJアラートが発信された東京都の島嶼部は「誤発信」だったが、島嶼部の町や村は防災無線やメールで児童・生徒の登校を見合わせ、JR東日本も新幹線と在来線が一時運転を見合わせた。 2017年から運用されているJアラートは、ミサイル攻撃に関する情報などを都道府県や市区町村に送信し、瞬時に国民に情報伝達するシステムだ。政府はJアラートの強化を進め、従来は日本列島の上空通過が確定的になってから情報を発信していたものの、通過する可能性が高まった時点で発信するように見直している。 内閣官房の国民保護ポータルサイトによれば、Jアラートが発信された場合には国民に(1)屋外にいる場合、近くの建物の中か地下に避難する、(2)建物がない場合、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る、(3)屋内にいる場合、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋に移動すると呼びかけている。 ただ、Jアラートへの信頼度に加えて、日本は有事に対する危機意識が海外と比べ高いとは言えず、情報が発信されたとしても避難できる人がどれだけ多くいるのかは未知数だ。2022年11月に実施されたNHKの世論調査によると、Jアラートが出された後の政府の説明が十分かという問いに対して「十分説明している」は7%、「説明が足りない」は81%だった。 日本は海を隔ててロシア、中国、北朝鮮と向き合う。航空自衛隊が領空侵犯のおそれがある外国機に対して緊急発進する「スクランブル」は増加しており、2010年度は386回だったものの、2016年度には1168回にまで急増した。2022年度は778回で対中国が7割を占めている。日本の安全保障上の脅威は北朝鮮の弾道ミサイルだけではないのだ。 想定したくはないが、仮に巨大地震が発生したタイミングでミサイルが襲来したらどうなるだろうか。首都直下地震や南海トラフ巨大地震が発生した場合には自衛隊は巨大災害への対応にマンパワーを割く。「国家を守る自衛隊」と「国民を守る自衛隊」という二つの役割を同時に求められることになれば、本来の対処能力が発揮できないのは言うまでもない。だが、大地震はいつ襲ってくるのかはわからない。台湾海峡が緊迫化しているときに「地震発生は遅らせてくれ」というわけにはいかないのだ。 関西大学の永田尚三教授は「海外では『災害対策』という際に自然災害より、他国からの武力行使に備える。日本は自然災害に重きを置く。過去に起こっていない現象をもとに準備していくことを得意としていないようだ」と語る。いつまで、どこまで、どうやって。厳しさを増す安保環境と自然災害の脅威を前に、我が国が取り組むべき処方箋はまだ示されてはいない。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)