南伊豆特産の伊勢エビ不漁 秋の関連イベント中止へ “看板”確保できず「観光に痛手」
近年不漁が表面化している南伊豆町特産の伊勢エビ。全国に誇る一大産地での関連イベントが今秋、中止となったことが25日までの関係者への取材で分かった。近年の記録的な不漁が要因。長引く黒潮大蛇行との関連性を指摘する意見がある中、関係者の1人は「伊勢エビは町の“看板”なだけに、観光客の誘客へ大きな痛手だ」と嘆く。 このイベントは特産の逸品を味わえる「伊勢海老づくしの特別な日」。町観光協会の主催で、漁期が始まった直後の9月下旬～10月ごろに町内で開催、伊勢エビの大食い競争などが人気を博してきた。屋外開催のため、昨秋は強風予報により中止となった。 協会によると、イベントは町から年間で補助金100万円ほどを受け開催していた。町内では10月から11月にかけ、イベントと別に宿泊企画「伊勢海老まつり」を開催。宿泊とエビ料理がセットになった人気企画だが、近年は宿泊施設から「（不漁で）エビを確保できず宿泊を受け付けられなくなった」との報告もあったという。
同協会や伊豆漁協南伊豆支所（同町）によると、2023年度の町内の漁獲量は約9200キロ。21年度（約1万7800キロ）から約半減した。かつては5万キロを超えた年もあり、減少に歯止めがかからない格好だ。24年度の漁協直売所価格は1キロあたり7800円。漁獲量が減っている中で23年度（同9720円）から安価になったが、「他産地の相場を考慮しつつ、少しでも買い求めやすくするため」（漁協担当者）としている。 岡部克仁町長は23年の町議会12月定例会でイベントの存続可否を根本的に考えるとの意向を示し、「町内の宿泊施設や飲食店の関係者から、エビの入手が困難な時に（イベントが）不謹慎だという意見も寄せられている」と答弁していた。町幹部は「イベントを再開したいという思いはもちろんある。ただ、漁獲量が現状のままならば相当厳しいだろう」と苦しい胸の内を明かした。
長引く黒潮大蛇行 エサ減少？
伊勢エビ不漁の一因と考えられているのが、観測史上最長の期間で長引いている黒潮大蛇行。直接的には影響を受けていないものの、食物連鎖の流れでエビの不漁につながっているとの見方がある。 県水産・海洋技術研究所伊豆分場（下田市）によると、周辺の海域では近年海中の水温が上昇している。水温の上昇により一部の海藻の生育状況が悪化。その影響を受けて、海藻を好む貝類やカニをはじめとした甲殻類などが、減少していると想定される。結果的にこれらをエサとする伊勢エビの漁獲減にもつながっている可能性があるという。同分場は「現時点で大蛇行が収まる兆しはみられない」としている。
