満月の夜、なぜ「野生動物との衝突事故」が1.5倍も増加するのか? 11月16日「ビーバームーン」で考える
「7万件超」ロードキルの現実と対策
道路上で発生する野生動物の死亡事故、いわゆる「ロードキル」は、モータリゼーションにともなう深刻な問題である。国土交通省の報告によると、2022年度における直轄国道でのロードキル件数は約 「7万件」 にのぼる。 ロードキルの犠牲になる野生動物には、シカやクマ、イノシシなどの大型動物から、タヌキ、キツネ、イヌ、ネコなどの中型動物、さらには鳥類などの小型動物まで多岐にわたるが、その中で最も多いのは中型動物である。 衝突被害を軽減するためのAEB(衝突被害軽減ブレーキ)は、中型動物以下の検知や衝突防止には十分に効果的でないこともあるといわれている。しかし、それでも備えている方が事故防止に役立つのは確かだ。2024年、このAEBの性能が大きく向上したことが報告されている。 米国自動車協会(AAA)は、10月24日に発表したリポートで、2017~2018年モデルの車両と2024年モデルの車両のAEBシステムを比較し、2024年モデルのAEBが着実に改善されていることを報告している。 AEBは、先進運転支援システム(ADAS)の一部で、センサーを利用して車両やその他の障害物との衝突の危険を検知する。もし衝突の危険があると判断され、ドライバーの反応が遅れると、システムは自動的にブレーキをかけ、車両を減速させるか、完全に停止させることで衝撃を軽減するか、衝突を回避しようとする。
高速走行で残る課題、
検証実験では、各車両のAEBを時速 ・12マイル(約19km) ・25マイル(約40km) ・35マイル(約56km) でテストし、AEBが追突事故をどのように防ぐかを確認した。 旧型モデルのAEBは衝突を51%しか回避できなかったが、2024年型車両のAEBはどの速度でも衝突を100%回避した。さらに、2024年型では時速45マイル(約72km)でもテストを行った結果、4台中3台が衝突を回避。しかし、時速55マイル(約89km)では、残念ながらすべて衝突を回避できなかった。 高速走行時にはまだ課題が残るものの、AEBの性能が着実に向上していることが確認でき、技術の進歩が感じられる。 ただし、AAAは、ドライバーがテクノロジーに完全に頼るべきではないと強調している。AEBは衝突の被害を軽減したり、衝突を防ぐのに役立つが、自動運転技術ではないため、ドライバーの注意が必要である。 走行速度が高いほどAEBの効果は低くなり、ロードキルのリスクも高まる。安全運転はもちろんのこと、速度には常に注意を払いながら運転することが大切だ。旅行中にレンタカーを利用する際は、特に野生動物が多い地域では、不慣れな車での運転に気をつけ、野生動物をひかないよう心掛けたい。
仲田しんじ(研究論文ウォッチャー)