「雨乞い」効きすぎました…まさかの展示を〝撤収〟 博物館のSNS投稿が話題に
神様をあえて怒らせる儀式とは?
SNSでは展示の内容そのものについても、興味を持った人が多かったようです。 特に反応が多かったのは「馬の頭部を『水神の淵』と呼ばれる小川に投げ込んで、神様の怒りを買う」という儀式。 博物館では実際に使われた馬の頭の骨も展示。神様にお願いするのではなく、怒らせて雨を降らせるという儀式に、SNSでは「なかなか過激な内容」と驚く人もいたようです。 鈴木さんは「古代の民間信仰では、地震や雷、大雨などの天変地異は、神様が機嫌を損ねた結果に起こるものだと信じられていました。考古学の世界ではよく知られていることなのですが、一般の方には意外に思われたようですね」と話します。 雨乞いの儀式は奈良時代を中心に、飛鳥時代から平安時代ごろまで続いていたそうです。 「当時の人々は『不浄のもの』とされる馬の生首を小川に投げ込めば、龍神は怒って雨を降らせるだろうと考えたようです。本物の代わりに馬や牛を描いた木製の絵馬を投げ込むこともあったようで、これも実際に使われた絵馬が見つかっています」 雨乞いに使われた品々は、浜松市内にある伊場遺跡やその周辺から出土したもの。 伊場遺跡は奈良・平安時代の役所跡だったそう。当時、この一帯は湿地帯で小川も流れており、いけにえやその代わりの絵馬を投げ込む雨乞いの儀式が執り行われていたといいます。 「雨が降りすぎた際には『長雨封じ』として、雨を降らせるのを止めるよう神様に祈る呪文が書かれた『呪符木簡』と呼ばれる木の札が使われました」 鈴木さんによると、こうした儀式は全国各地でみられるものですが、実際に儀式に使われた品が残っているのはとても珍しいそうです。
考古学の世界に
鈴木さんは「雨乞いに限らず、古代の日本には、各地でこうした土着的な民間信仰が根付いていました」と語ります。 投稿がSNSで話題になったことについて、「シャーマンキング」「呪術廻戦」といった「呪い(まじない)」を題材にした漫画・アニメ作品が一つのジャンルとして定着したことで、関心を持つ人が増えているのではないかと鈴木さんは分析しています。 「大きな反響をいただいて、少し驚いています。これをきっかけに、歴史や考古学の世界をのぞいてみてもらえると嬉しいです」 今回は1週間で中止になってしまった雨乞いの展示ですが、今後、別の企画展や常設展の一部として展示を再開することを検討しているそうです。