なぜ日ハムの吉田輝星は沖縄2軍キャンプ初日にブルペンに入らなかったのか?
日本ハムのドラフト1位、吉田輝星投手(18)が1日、沖縄国頭での2軍キャンプでプロ野球人生の第一歩を踏み出した。2軍スタートにもかかわらず報道陣が殺到する注目のキャンプインだったが、軽いメニューで初日を終えてブルペン入りは2日に“お預け”となった。その理由は、「育成の日ハム」らしい首脳陣の配慮で、荒木大輔2軍監督は「明日のブルペン?何も期待していない」と、プレッシャーをかけず「今できる全力を出せ」とプロ心得を説いた。吉田は、そんな1日にさえテーマを抱いていた。ただものじゃない高卒ルーキーは16日に予定されている紅白戦登板に最初の照準を合わせている。
「育成の日ハム」の方針
報道陣に配られたメニュー表のP(ピッチング)欄に吉田、柿木蓮の昨夏の甲子園決勝で投げ合った2人の高卒ルーキーの名前はなかった。吉田はアップからキャッチボール、投内連携、100メートルダッシュ、体幹、チューブを使ったインナーマッスルトレ、サードの位置でのノックなどの軽めのプロ初日メニューをこなした。 テレビカメラにズラっと囲まれたのは午後3時過ぎ。 「暖かいので体が動いている。明日もしっかりと動きたい。緊張感はあるけれど、その中でも声を出して先輩に負けないくらい全力で活気を出してやっていかなければいけない」 だが、初日のブルペンでのピッチングのお披露目はなかった。荒木2軍監督が「選手にとっていい刺激になっている。(連日取材を)続けて下さい」と、感謝するほどつめかけた多くのメディアは、肩透かしとなった。 ケガでもない限り、注目ルーキーの初日ブルペン回避は異例とも言えるが、これはチームの指示。 吉田は、「“やってやるという気持ちが先走らないように”という指示が新人みんなにあった。“初日は焦らないで、ゆっくりやっていいよ”、という指示だったので、流れ通りにやった。残って練習とか、できるだけ慣れてから、やっていこうかな」という。 なぜ日ハムの首脳陣は初日にスーパールーキーをブルペンに入れなかったのか。その理由を荒木2軍監督が説明する。 「言葉を選べば“焦るな”になるかもしれないが、今までプロでやってきたピッチャーと、ルーキーとは、当然、違う扱いにはなる。雰囲気に慣れることで、初日からマックスにはして欲しくはなかった。野手は(ルーキーも)一通り(同じメニューを)やったが、慣れていかないと」 まずは、プロの練習の流れを覚えること。多数のメディアが注視するなかで、初日からガムシャラに張り切らせて逸材に何らかのアクシデントが起きる危険を回避したのである。 つまり本格テイクオフへの助走というわけだ。 その首脳陣の意図を吉田自身もしっかりと理解していた。 「初日は焦るな、やることをやって、ゆっくりするところはゆっくりやるのがテーマ。明日からはピッチングが入っています。 助走? 流れに慣れ自分で考えながらやれることがテーマで、メニューが決められている間に自分でどういうことをするかを決めていかないといけない。プロになったなあと。強い責任感をもってやっていきたい」 非常にクレバーである。金足農高を甲子園の決勝まで引っ張ってきた理由がよくわかる。