〈未解決事件〉「死んだ姉がこの曲、好きで…」大阪西成女医不審死事件の遺族が今も歌う唄…被害者遺族として、人気バンドのボーカルとして、たゆたう心の軌跡
昨年、子どもが誕生。これからの目標
──事件のあと、どんなことを考えましたか? 簡単に言えば「人間ってあっけなく死んでしまうんだな」ということですよね。それから、これまではどちらかと言うと陰謀論や都市伝説にあまり関心がなかったのですが、そういうものを一笑に付すことができなくなりましたね。この世界、なにが起きても不思議ではないのだなというのは常に感じます。 ──ヤジマXさんがアーティストとして描いている、今後の展望があれば教えてください。 ライブでお客さんを楽しませるのは当然で、もっとその先にある、「圧倒的で目が離せない、そして気づいたら時間がすぎていた!」というような世界に誘いたいですよね。それがアーティストとしての目標です。 それから私事ですが、昨年、子どもが生まれました。今本当に可愛いんですが、「思春期になったらオヤジはバイキン扱いされるんじゃないか」という恐怖があって(笑)。もしそうなったら、家には居られないけど、そのぶん外でしっかり稼いで家計を支えるために、ソロで日本中を回る“親父アーティスト”になりたいなと思ったりもします。もちろんお客さんを呼べて、商業的にも一定の利益が出るような音楽活動で、家計を支えたいですね。 モーモールルギャバン30周年は、Zeppツアーが組めて、ファイナルはさいたまスーパーアリーナ……なんて夢を描きながら、これからもアーティストとして歩みを止めないでやっていけたらという想いです。 ※ 私生活で生じたシリアスな出来事が、「売り物」に影響を及ぼす職業はある。アーティスト、ミュージシャンもそのひとつだろう。 ヤジマX氏が醸す雰囲気は、まるでカテゴライズされるのを嫌うかのようにたゆたっている。悲しみに暮れるだけの遺族でもなければ、現実離れした白々しいポジティブさを口にするわけでもない。 だがそれだけに、圧倒的な現実を突きつけられる。アーティストや遺族である以前に、ヤジマX氏が、いや誰しもが、さまざまな感情をないまぜにしながら前に進むひとりの人間であるという現実を。 青春期から地続きで歌を紡ぐモーモールルギャバンという場所で、ヤジマX氏はこれからも己が思うままに、旋律を奏で続けていく。 取材・文/黒島暁生
黒島暁生
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