大型トラック用の燃料電池は既に実用段階!? ダイムラーとボルボの合弁会社がパイロット生産を開始!
「製品」を超えて燃料電池のエコシステムを構築
大型車用の燃料電池システムの開発と製造だけでなく、セルセントリックは非常に複雑な組み立て工程の周辺に、完全なエコシステムを構築する予定だ。これにより高い品質を実現するとともに、車両管理システムに駆動ソリューションをシームレスに統合するなど、独自の製品を提供する。 また、メンテナンス・修理サービスを含む包括的なサービスパッケージは、整備等によるダウンタイムとユーザーが予期しない故障を最小化する。これは、運送業界にとって車両を最大限に活用するうえで極めて重要なことだ。 さらに、製品としてのライフサイクルが終わっても燃料電池システムが環境に良くなることを計画している。 企業活動のすべてにおいて最も高いレベルの持続可能性を目指すという同社のコミットメントに沿ったもので、循環型経済のコンセプトに基づき、以下の4つのステップで資源と原材料、そして製品を可能な限り慎重に、節約して使うことを目標としている。 その4ステップとなるのが、「リユース」(再利用)、「リファービッシュメント」(再生)、「リマニュファクチャリング」(再製造)、「リサイクル」(再循環)だ。 リユースは車両用としては役目を終えた燃料電池システムを、より要件の緩い用途に再利用することで、リファービッシュはサービスライフを延長するために整備・改修することを指している。いっぽう、リマニファクチャリングは全面的なオーバーホールにより新品と同等の製品を製造することだ。 そして、完全に寿命を終えた製品もリサイクルによって原材料を回収し、新しい燃料電池システムの製造に活用する。 セルセントリックは2024年5月には、よりパワフルで効率的な長距離輸送用の次世代(NextGen)燃料電池システムを米国・ラスベガスで開催されたACTエキスポで公開している。 親会社にあたるダイムラーやボルボは、セルセントリック製のプロトタイプ燃料電池システムによる厳しい現場環境での試験に成功しており、同社の燃料電池はすでに実用段階にある。ちなみにボルボは気体の水素を使っているが、ダイムラーはより難易度の高い液体水素の採用を目指している。 2大メーカーの合弁だけあって、量産化が軌道に乗れば他社が規模の面で追いつくのは難しいかもしれない。 また、燃料電池システムは、現状では原材料にプラチナ触媒などが必要となり、価格が非常に高い。普及に向けては(垂直統合等による)生産技術のコスト最適化や規模の追求のほか、希少資源の回収のためのリサイクルなど、エコシステム全体を考えた取り組みも重要になりそうだ。