「曲を使わせて」。突然の依頼は意外な相手から。パリ五輪を選手と共に戦ったアーティストたち
ノブさんの曲はパリの会場で日本チームの演技を盛り上げ、支えた。今は子どもたちに誇れる仕事に携われたことの喜びを感じている。「パパは五輪の曲を書いたんだと思ってくれる。選手やコーチが自分を見つけてくれなかったら、得られなかった感動です。唯一無二の仕事でした」 ▽可能性は無限大 アーティスティックスイミングは2018年4月にシンクロナイズドスイミングから名称が変わり、より芸術性が求められるようになった。パリ五輪からは音楽と同様に、振り付けにもプロが本格的に加わった。振付師のカオリアライブさん(47)。ミュージカルやファッションショーなど幅広く活躍している。中島HCから「作品が大好きなんです」とアプローチを受け、チームの一員になった。 「一度会いたい。来てください」と言われ、プールを訪れた。そこでいきなりアドバイスを求められることに。「ただ話をするだけと思っていたからびっくりした」。それでも率直に感じたことを伝えると、「これからも練習を見てほしい」と頼まれ、2022年4月から強化スタッフになった。
最初は悩んだ。「今まではチームのOGが振り付けをしていたと知らされた。競技経験がない自分が、無理な振り付けを言っているんじゃないか」。中島HCにそう伝えると、「知らない人がつくる振り付けだからこそ、トライしてみたい」との答えが返ってきた。 カオリアライブさんが担ったのは主にプールに入る前の陸上動作。選手を見ていて、足をついて床を押す「立位」のパワーが足りないとすぐに気付いた。いつも水中でのパフォーマンスしているからだ。独自に陸上のトレーニングプログラムを組んだ。選手はみるみる力をつけ、パリでは新たに取り入れた陸上のリフトも見事に決めてみせた。 日本代表は惜しくもメダルを逃した。しかし、カオリアライブさんは「表現力はすごく変わった。だけどまだまだできると思う。可能性は無限大」と語る。試行錯誤の日々を経て五輪を共に戦ったことは大きな喜びだった。「機会があればこの先も強化に関わりたい。もっともっと強い日本にしていきたい」と力を込めた。