[山口県]甚大被害の爪痕いまも 美祢市、大雨災害から1年
昨年6月30日から降り続いた記録的な大雨で甚大な被害が出た美祢市の大雨災害から1年がたった。市内は復旧作業が進み日常生活を取り戻しつつある一方、運行再開の見通しが立たないJR美祢線など災害の爪痕も残る。 【写真】線路沿いに雑草や雑木が生い茂るJR美祢線=美祢市 同市防災危機管理室によると、昨年7月1日未明に真長田雨量局で1時間当たりの雨量が99ミリに達した。東厚保観測所では6月29日~7月1日の総雨量が386ミリだった。公共土木施設は河川59カ所を含め123カ所で被害があった。家屋は全壊2棟を含む55棟が被害を受けた。床上浸水は202棟、床下浸水は197棟だった。19の避難所に計112人が避難した。現在1人が行方不明となっている。 同市大嶺町奥分の麦川川が氾濫した地区では、一部の住宅が床上浸水の被害を受けた。近くに住む女性(76)は「朝起きて外の景色が違うと気付いた。がれきやポリタンクなどが押し流されて路上に散乱していた。災害から数日はトイレが使えず困った」と当時を振り返る。 災害後は簡易トイレを購入し、自然災害で家電製品が壊れた際に補償される保険に加入するなどの対策をした。蓄電池の購入も検討しているといい、「今後何が起きるか、いつ自分の身に危険があるか分からない。いざという時のために備えたい」と話した。 ■小学校で復旧進むも 近くの麦川小学校(三好恵子校長、8人)は、通学路として使っていた橋が壊れ、グラウンドや校舎内に土砂が流れ込んだ。土砂を撤去し床板を張り替えるなど、敷地内の復旧工事は今年4月ごろまで続いた。 北本徹教頭は、当時の児童の様子について「気丈に振る舞ってはいたが、泥だらけの教室や花壇を見てさみしかったと思う」と表情を曇らせた。グラウンドが使えるようになったのは今年の1月以降。サッカーゴールを新調し、休み時間に外で遊ぶ姿が見られるようになった。「運動が好きな児童が多い。明るくなり、笑顔が増えた」 一方でプールは機械が壊れて使用できず、市による修復もできないため、周辺の小学校のプールを借りて対応しているという。今後は水害の経験を踏まえた防災学習を実施する予定で、「水害の恐ろしさを身に染みて感じた。自分の身を守ることを第一に行動してほしい」と気を引き締めた。 ■美祢線の早期復旧は 災害後全線不通となっているJR美祢線について、JR西日本は今年5月に「単独での復旧や持続的な運行は困難」とし、美祢線の持続可能性や利便性向上について議論する部会の設置を提案。篠田洋司市長は6月の会見で「雑草や雑木が生い茂り、見た目からも地域の閉塞(へいそく)感や諦め感が増す」と現状を危惧し、「早期復旧に向けて検討していただきたい」との考えを改めて示した。 同室によると、市職員の配備体制を一部変更し、災害発生時の人員確保を強化。行政や消防が使用する土のうを公民館など市内14カ所に計5千個配備した。今後は訓練や出前講座を実施し「住民が自分で災害などに関する情報を取得し避難できるよう体制を整えたい」とした。