なぜ私たちは何でも「誰かのせい」にするようになったのか…意外と知らない「根本原因」
価値は有限ではなく、無限に創造できる
以上、家庭・仕事・健康という3つの側面から、正しい経営概念によって価値創造できる例を説明してきました。 この「価値創造」ということについて最後に付言しておきます。 本書『世界は経営でできている』の底流にあるもう一つのテーマは、 「価値は有限ではなく、無限に創造できる」 ということでした。 価値が有限であるという観念に囚われている限り、自分と他者とのあいだで「価値の奪い合い」に終始してしまいます。それでは、誰もが豊かな社会など実現できないでしょう。 世にあふれるビジネス書も、「いかにして他者との競争に勝つか」という、「価値有限思考」の論理によって綴られた内容がほとんどです。 残念ながら日本は「価値は有限である」という誤った概念が普及してしまったため、現状を誰かのせいにする言説が流行しています。 若者/高齢者が悪い、男性/女性が悪い、労働者/経営者が悪い、政治家/有権者が悪い……。このように対立を煽る言葉が飛び交っているのがいまの世の中です。他者は自分から価値を奪う敵だと思い込んでいるからこそ生まれる言説です、まさに価値は創り出せないと思い込む「価値有限思考」の弊害といえるでしょう。 しかし、対立するように見える人間関係にも、「価値無限思考」で向き合っていくならば、問題解決の糸口は見いだせます。そして価値無限思考に立脚するならば、他者は奪い合いの相手ではなく、共に価値を創造する仲間となるのです。 『世界は経営でできている』は、「すべての人が経営人材となるべきである」との私の信念をストレートに注入した一冊です。学生時代に文学サークルに所属していた私の趣向が出てしまい、各章タイトルや小見出しをすべて既存の文学作品や映画作品のパロディで作成しました。無謀な試みの結果として、執筆には膨大な時間と労力を費やしてしまったのですが……。 その甲斐あって、15のテーマそれぞれ単体で読んでも、経営エッセイとして十分に楽しんでいただけることでしょう。そして最後まで読み通していただければ、「価値は無限に創造できる」という裏テーマが表れてきて、さらなる楽しみと学びを体験できることを保証します! 『世界は経営でできている』を読んだ人がその内容をどんどん広めていただければ(そして友人知人にも買っていただければ)、価値創造によって共同体全体の幸福を実現できる「経営人材」が世の中にたくさん生まれることは間違いありません。それこそが、この社会を真に豊かにする道だと信じています。 つづく「老後の人生を「成功する人」と「失敗する人」の意外な違い」では、なぜ定年後の人生で「大きな差」が出てしまうのか、なぜ老後の人生を幸せに過ごすには「経営思考」が必要なのか、深く掘り下げる。
現代新書編集部