総合商社、資本効率改善を加速-バフェットら投資家の目意識
(ブルームバーグ): 総合商社各社が資本効率の改善に向けた取り組みを加速している。著名投資家ウォーレン・バフェット氏による投資が呼び水となって投資家の関心が高まる中、低収益の事業は売却し成長分野への投資や株主還元に振り向けていく考えだ。
住友商事は2日に発表した新たな中期経営計画で、低採算資産の入れ替えを進め3カ年で8000億円のキャッシュインを見込むと明らかにした。資産入れ替えなどによるキャッシュインを4500億円としていた前中計から大幅な積み増しとなる。また、中計期間中は配当を維持あるいは増配する「累進配当」とするなどの株主還元方針も打ち出した。
三井物産は1日、インドネシアの石炭火力発電所の持ち分を約1090億円で売却したと発表。同社は同日の決算発表で3カ年の中期経営計画期間中の資産売却によるキャッシュイン見通しを4割超引き上げ1兆2400億円とすることも明らかにした。基礎営業キャッシュフローの増加もあって、中計期間株主還元を4200億円上積みし1兆1700億円とするとした。
東京証券取引所による資本効率の改善要請を受け、収益性や株価が低迷する上場企業の中で事態打開に向けた動きが広がっている。5大商社は長らく株価純資産倍率(PBR)が低迷していたものの、バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイによる投資が明らかになって以降株価が大きく上昇したことに加え、各社の低収益事業の売却などの自助努力も寄与し、PBRは改善傾向にある。
岩井コスモ証券のアナリスト清水範一氏は「ある程度利益が高水準にある時に、利益が落ち込まない程度にポートフォリオの入れ替えを進め、株主還元も積極化していることが海外投資家による評価に繋がっていると見ている」と、2日までに開示された商社決算について述べた。
中計で資産売却で2兆円のキャッシュインを見込むとしている三菱商事の野内雄三最高財務責任者(CFO)は2日の決算発表で、これまでの累計実績は約1.5兆円となっており順調に進捗していると述べた。野内CFOは今期も資産売却は「一定のものを計画している」としたが、詳細は明らかにしなかった。三菱商は先月末、約35%を保有する日本KFCホールディングスの株式売却などの資本政策を含め様々な検討を行っていると明らかにしている。