パックご飯が米不足に苦戦 商機とみる動きも
包装米飯各社は、今夏のコメ不足による代替需要と価格の高騰に右往左往している。越後製菓は9月12日、主力の「日本のごはん」シリーズを緊急終売した。主食用精米の品薄による代替需要、南海トラフ地震臨時情報などによる備蓄需要の高まりで注文が急増。商品供給量の確保ができなくなった。各社も同様で、出荷調整などせざるを得ない状況が続いている。また、米価の高騰による価格改定も避けられず、トップのサトウ食品らが年内の価格改定を決定。9月に発表した。一方、これらの動きをコロナ禍の特需同様に商機とみるメーカーも見られる。 包装米飯は、消費者の生活様式の変化を背景に着々と市場が拡大。コロナ禍の支援物資などの特需が終わっても、需要は高止まりしている。各社ともに商品ラインアップの整理などしつつも、依然として生産ラインをフル稼働し商品供給を続けている。その中で、8月の南海トラフ地震臨時情報や台風被害に端を発した主食用精米の品薄が表面化。代替品としての受注が、各社に殺到した。各社ともに増産の余裕がない中での突然の代替需要に、在庫がひっ迫。出荷先や出荷量を絞ったり、納品日を遅らせたりするなどの措置を取らざるを得なくなった。また、小売店に販促の自粛を呼び掛ける動きなども見られた。 越後製菓の「日本のごはん」シリーズ緊急終売も、同様の理由による。独自の高圧製法による味の評価が高い主力商品だったが、原料の新潟県産コシヒカリもひっ迫し、商品供給ができない見通しとなったためだ。12月初旬にはリニューアルした新商品を発売するため、一時休売的な見方もできるものの、インパクトは小さくない。
12月の再値上げ相次ぐ
一方、8月の23年度産米の相対取引価格が、9月17日発表の速報値で玄米60kg当たり1万6133円だった。6月に付けた11年ぶりの高値水準を更新し、前年同月の22年度産米から17%増と高騰。24年度産米も各地のJAグループから生産者への概算金の増額提示が続いている。業界への影響も大きく、東洋水産は7月にいち早く11月からの改定を発表。業界大手のサトウ食品は、9月に12月からの改定を発表した。越後製菓も追随する。 この状況下を商機と見る向きもある。たいまつ食品は、取引先の理解を得た上で、多くの消費者にいきわたるようきめ細かく出荷できる体制を作り、代替需要からの新規客開拓を狙う。 また、米価高騰が今後のコメ消費への影響を懸念する見方がある一方、TVをはじめ各メディアが農家の苦境を報じたことで、消費者の価格改定への理解が深まっているとみる向きもある。「これまでが安すぎた。あらためてコメの価値を見直す機会になったのではないか」という声も業界内では聞かれる。
日本食糧新聞社