〈イスラエルの重大な欠点〉レバノン侵攻で見えない出口戦略、中東安定はあるのか?
10月3日付けのニューヨーク・タイムズ紙は、イスラエルはレバノンに侵攻し有利に戦闘を進めているが、明確な出口戦略が無いのではないか、という解説記事を掲載している。要旨は次の通り。 ハマスのイスラエル襲撃という同国の歴史上最悪の軍事的失敗から1年後、イスラエル軍は威信を回復した。9月27日の空爆ではヒズボラの指導者のナスララ師を殺害したが、その作戦名「新秩序」は、域内の状況を変え、「炎の輪」と呼ばれるイスラエルを包囲するイランの代理勢力を崩壊させるというイスラエルの野望を示唆している。 イスラエルは複数の戦線で戦っており、10月2日にはイランが発射した200発近いミサイルをほとんど迎撃し、イスラエル軍は、より大がかりな地域紛争をも躊躇せず、イランに大きなツケを払わせると誓った。 ナスララ師の殺害は、昨年10月の大失態の1周年を前にイスラエルの士気とイスラエル軍の評判を速やかに回復させた。他方、この1年間、イスラエル軍はハマスの襲撃に対してガザで容赦の無い反撃を行い、最近、ハマスの軍事的能力を大幅に破壊し、ハマスの戦闘力を減少させたが、それには4万1000人以上のガザの住民が殺害されるという重い代償を支払っており、イスラエルの国際的評判を貶めた。 さらに、ネタニヤフ首相は、「完全勝利」に固執しているが、軍の首席報道官ですらイデオロギーおよび運動としてのハマスを殲滅することは不可能だと述べている。 ナスララ師を爆殺して以来、イスラエルは可能な限りヒズボラの戦力を低下させて来ており、さらに、地上侵攻作戦も開始した。アミドール元イスラエル国家安全保障問題補佐官は、イスラエルが示している軍事面およびテクノロジー面の能力は、イスラエルが再び軍事的に域内の要石となり、イランとその代理勢力に対抗出来る事を可能にしたと述べている。
10年近く前からイスラエル軍は、ヒズボラが南レバノンの村々に軍事拠点を設けていると警告し続けており、昨年10月、ハマスがイスラエルを紛争に巻き込むまではイスラエル軍が対ヒズボラ作戦の準備を進めて来た。イスラエル政府は、ガザではハマスを壊滅させると宣言しているが、レバノンでは(ヒズボラの国境越しの攻撃で避難している)約6万人の避難民を帰還させるという穏健な目標を設定している。 イスラエルのガラント国防相は、ヒズボラに対する戦争は、ヒズボラに対して戦闘を止め、国境から兵力を撤退させるように段階的に進められると述べている。しかし、専門家は「イスラエルの戦略目標が明確ではない」と言っており、撤退まで18年かかった1982年のレバノン侵攻作戦のようにイスラエルがレバノンで泥沼にはまるかも知れない。 専門家は、イスラエルが直面する問題は、どのようにして軍事的な勝利を長期的な外交的解決に落とし込むかである、と述べている。イスラエル軍のオリオン退役将軍は、物事が逆風になる前に出口戦略を見つけられるかに掛かっており、「我々は、(終盤でなく)まだ、映画の最中にいる」と述べている。 * * *