「わざわざ聞くのは申し訳ない」は時代遅れ!「多様性」の時代に日本人を縛ってしまう「呪いの言葉」
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行する。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第19回 『「こんなもの送られてきても」...被災者の「本音」が丸裸にした「日本人の“おもいやり”」が裏目に出てしまう納得の理由』より続く
日本人を縛る呪いの言葉
「人に迷惑をかけない」という言葉について、少し書いたよね。 ぼくはこれは日本人を縛る呪いの言葉だと思っているんだ。 どうしてか分かるかい? 「人に迷惑をかけない」ということは、その人にとって何が迷惑で何が迷惑じゃないか、分かっているということなんだ。 孫のためにお菓子をいっぱい買っているおじいちゃんやおばあちゃんの存在は、オーガニックを大切にする親からすれば、申し訳ないけど迷惑だよね。 でも、おじいちゃんおばあちゃんに「人に迷惑をかけないで」と言っても通じるだろうか? 君のセンスを無視して、一方的に服を買ってくる親は迷惑だよね。でも親に「私に迷惑をかけないで」と言って分かってもらえるだろうか? 被災地に折り鶴をいっぱい送る人は、被災地の人からすれば迷惑だよね。でも、送ってきた人に「迷惑をかけないでください」と言ったらどうなるだろう。ひょっとしたらネットで大炎上して、大騒ぎになるかもしれないね。 「人に迷惑をかけない」と言っても、通じないことが分かるかな。自分の善意が相手の迷惑になることが、なかなか分からないんだ。 だから、「人に迷惑をかけない」と言うだけだと、何も始まらない。
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