東電株主総会 今夏は節電要請せず 電力値上がり、供給能力は火力建て替えで向上
26日の東京電力ホールディングスの株主総会では電力需給を巡る質疑があったが、政府は今夏について、電力供給が不足する恐れは少ないとして事前の節電要請を行っていない。電気料金の値上がりなどもあって家庭や企業では節電志向が強まっており、最大消費地の東電管内では火力発電所の建て替えによって電力の供給力が向上した。10年に1度の厳しい暑さを想定した電力需要に対し、安定供給に必要な電力を確保できる見通しとなった。 夏の節電要請は令和4年に7年ぶりに全国規模で実施された。脱炭素化の流れの中で古くなった火力発電の建て替えが進まず、供給力が落ちたほか、コロナ禍による外出控えで冷房需要が高まったことが要因だ。コロナが感染症法上の5類に移行された5年の夏は、東電管内でのみ節電要請が行われた。 一方、今夏は政府による電気・ガス料金の補助が5月の使用分を最後にいったん終了し、6月使用分の電気代が大幅に値上がりした。この影響で家庭や企業で昨年より節電が進む見込みとなっている。また、トヨタ自動車など大手自動車に型式認証の不正問題が発覚し一部車種を生産停止。幅広い裾野産業に影響が広がり、電力需要に影響を及ぼす可能性もある。 こうした中、供給面では昨年から今年にかけ、火力発電会社JERAが立て替えた発電所が稼働している。このため、政府は全国で4年並みの需要があった場合も安定供給ができるとみている。 もっとも、人工知能の活用拡大で今後はデータセンターを中心とした電力需要の拡大が見込まれる。現在確保している電力供給の中には、老朽化した火力発電所が含まれ、来年以降は電力需給が再び逼迫するリスクもある。政府は安定的な電源として原発の再稼働を進める考えだ。(織田淳嗣)