「海を愛する医者はいませんか?」奇策か挑戦か、誘致の背景にある「全国ナンバーワン」の県の危機感 出勤前にサーフィンOK、「小さい病院でも学ぶことはたくさんある」
こうした事態を打開しようと、徳島県が注目したのが県南部にある全国屈指のサーフスポットだ。 県は2024年8月、県サーフィン連盟と協定を締結した。県内のサーフィン発祥の地とされる牟岐町の内妻海岸から車で約3分の距離にある県立海部病院で、出勤前にサーフィンをするといった働き方のモデルを作り、「サーフ・ホスピタル」としてブランド化を目指す。医療従事者を対象としたサーフィンの全国大会を来秋開こうと、実行委員会も始動した。 ▽サーファー看護師 2023年8月に海部病院に就職した看護師の奥井絵理香さん(45)は、もともと大阪市の病院で勤務していた。職場の同僚に勧められて始めたサーフィンを通じて知り合った神戸市出身の夫と、夫婦で徳島が気に入り、2016年に海陽町へ移住した。 「徳島は(筒状の波である)チューブが世界的にも有名。また暖かい気候や豊かな自然の中でのサーフィンに魅力を感じた」 今は週2日ある休日に波に乗る生活だ。今後働き方改革が進み、日中にサーフィンをして夕方から夜勤に入るといった勤務体制が組めるようになれば、波と過ごせるのは週3~4日に増やせると思いをはせる。
県病院局の福壽局長は力を込める。「地域医療の存続は喫緊の課題。あらゆる手段を使って医師を確保しなければならない。前例のないやり方で取り組む新たな挑戦だ」
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