1980年代に採用されたマニアックな日本車の装備3選 Vol.2
すべては快適なドライブのために
クルマのインテリアデザインは、時として住宅にもたとえられる。ピュアEVが増えている昨今だと、充電中に時間つぶしができるよう、車内でくつろいでいられるのも重要なテーマだ。ドイツを中心に、各自動車メーカーは取り組みを見せている。 1980年代にも、ドライブ中の快適さをめざして、さまざまなアイディアが生まれた。 突飛なものもあれば、継続的に改良を施していけば”当たり前”の装備になったのでは、と思うものもあって、いま見ても興味がつきない。
(1) トヨタ「セルシオ」(初代):デジタルオーディオテープレコーダー(DAT)
クルマと切っても切り離せないのが、オーディオだ。いまの音源はスマートフォンのアーカイブで、ちょっと前まではCDプレイヤーをそなえているモデルもあったけれど、ほぼ消滅。私が乗っていたポルシェ「911(993)」にはオプションで6連奏のCDプレイヤーが装備されていて、当時はそれだけで“贅沢”だった。 1989年に日本発売されたトヨタの初代「セルシオ」は、現代の視点から見てもぜいたくのきわみ。当時は心底驚かされたものだ。4.0リッターV型8気筒、制振性をきわめたボディ、電子制御サスペンションといった根幹技術にくわえ、快適装備のオンパレード。 ここでは列記しないが、トヨタは今もオーディオに凝っている(3Dオーディオの装備が待たれる)。初代セルシオは、当時としては注目の7つのスピーカーにくわえ、シート素材による音の反響率を考慮してイコライザーを使っていたとか。まぁ、乗る人の数や体型でも変わってしまうんだけれど、そんなこだわりを聞くのは楽しかった。 凝ったオーディオとして特記したいのが、デジタルオーディオテープレコーダー(DAT)のオプション設定だ。アナログで取り込んだ音源をデジタル変換し、再生はその逆をおこなう。メリットとしてテープが小型化するとともに、音のダイナミックレンジが拡がると言われていた。 セルシオでこのオプションを選択すると、通常のカセットプレイヤーを使うオーディオと“2階建て”ともいえる2DIN規格になり、ダッシュボードのフェイシアがボタンだらけ。当時はこれもまたプレミアム感につながった。 ただ私はほとんど記憶がない。というのは、家にレコードプレイヤーのシステムとつないだDATの録音機材がなかったからだ。プロユースではそれなりに評価されたDATだが、テープが高価だったし、それならいい音のためには直接CDを使えばいい(セルシオではもちろんCD再生可能)と考えていたからだ。大体の人はそうでしょう。 でも、このやりすぎ感がセルシオの真骨頂ともいえる。使う部品ひとつひとつの精度までチェックした“源流主義”で作られたセルシオ。いま乗ってもいいクルマである。電子制御サスペンション搭載車は、アフターパーツ入手などの点から、やめといたほうが賢明とかいうが、DATは、でも、改めて試してみたい。