ナタリードラマ倶楽部 2024年冬クールを語り尽くす(前編)
放送・配信中のドラマについて語りまくる連載「ナタリードラマ倶楽部」。2024年も年明け早々にたくさんのドラマがスタートした。Vol. 3となる2024年冬クールの前編も、本連載でおなじみのドラマウォッチャー・明日菜子と綿貫大介の座談会をセッティング。 【画像】座談会で好評だった「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」ビジュアル 前編では、2024年1月14日までに放送開始したドラマを取り上げる。「おっさんずラブ-リターンズ-」「正直不動産2」など続編ドラマの見方や、大河ドラマ「光る君へ」への期待、月9ヒロインへの心配など、ドラマを愛する2人のトークをお届け。 取材・文 / 尾崎南・脇菜々香 題字イラスト / トモマツユキ ■ 「正直不動産2」永瀬財地は、今の時代にフィットする理想の主人公(明日菜子) ──2024年の最初のクールが始まりましたね。今回は1月14日までにスタートしたドラマを対象にお話を伺います。今期は「おっさんずラブ-リターンズ-」「正直不動産2」「新空港占拠」「夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2」など続編ドラマが多い印象ですが、お二人はドラマの続編についてどうお考えですか? 綿貫大介 世間が期待しているからこそ、続編が生まれますからね。 明日菜子 「続編は難しいのに……」と思う分、私はシーズン2が面白いと、一気に評価が上がります。それこそ「ルパンの娘」とか続編のほうがさらに面白かったと思っていて。「コード・ブルー」も2nd seasonが一番好きです! 綿貫 今回は続編ドラマの中でも、「正直不動産2」(NHK総合テレビ・BSP4K 毎週火曜22時放送)が本当に観やすいです。 明日菜子 38歳になった山P(主人公・永瀬財地役の山下智久)の魅力が詰まってますよね。クールで寡黙な役を演じるイメージだったから、3枚目のキャラクターが新鮮! ──お仕事ドラマとして面白いですが、人間ドラマとしても胸を打たれますよね。 明日菜子 永瀬財地は今の時代にフィットする理想の主人公だと思います。“嘘をつけない”ということは“正直にしか生きられない”人なんですよね。(※)こういう時代だからこそ、彼がそんな自分を受け入れて、仕事で成功していくのが観ていて気持ちいいです。 ※編集部注:口八丁で成績1位を維持していた登坂不動産の営業マン・永瀬財地は、ある日突然、祟りによって“風”が吹くと嘘がつけなくなる体質になってしまう 綿貫 正直で実直なキャラクターって、いわゆる昔のヒーロータイプ。それが通用しなくなった今の時代に、“正直に生きられなくなっていった人間が正直に原点回帰していく”という物語を放送するのは、メッセージ性がありますよね。あとは、今リアルに引っ越しがしたいから不動産の知識がありがたい。 ──前作は、永瀬が“嘘がつけない”自分に抗おうとする描写も多いですが、今作ではどこか受け入れているように見えることがあります。 明日菜子 そこが泣けちゃうんですよ……! 前作でも永瀬が、“そうでしか生きられない自分”を受け入れるシーンでガラッと印象が変わりました。シーズン2では、ときには“風”に抗いつつも、より素の自分を出していく永瀬がまぶしくて……。小田和正さんの主題歌にも泣いちゃいます。 綿貫 永瀬が正直を売りにして営業成績1位になろうとするのが、めちゃくちゃいいですよね。少し気になったのは、(板垣瑞生演じる)新入り・十影健人の描き方。いくらマダムの継孫でも、ヘッドフォンしながら仕事するかな!?(笑) Z世代の描写がステレオタイプだなと思いました。ただ、シーズン2からディーン・フジオカさんが登場しているのはうれしい! 永瀬と真逆なタイプの(フジオカ演じる)営業マン・神木涼真がライバルとなることで、永瀬の正直営業が際立ってる。さらに5話で新たなキャラの営業マンが登場したので、これから楽しみです。 明日菜子 神木が極悪人だから、永瀬の素朴さが生きますよね。「正直不動産2」は続編ドラマとして理想的です。 ■ はるたんと牧が楽しく生活している姿をただ見せてくれればそれでうれしい(綿貫) ──「おっさんずラブ-リターンズ-」(テレビ朝日系 毎週金曜23時15分放送)は2018年から6年ぶりの続編ということで、注目を集めていますね。 綿貫 本当にファンが多いですよね。私は、2018年の「おっさんずラブ」のときから「難しい作品だな」と思っていたんです。“ボーイズ”ラブではなくうちは“おっさんず”ラブなんですっていう姿勢でBLの型を無視した作品だと思うんですけど、やっていることは結局ただ異性愛のラブコメを“おっさん”に置き換えているだけという印象なので……。特に「おっさんずラブ-リターンズ-」では、物語の主軸が恋愛から家庭や家族に移りましたよね。今の日本では、同性同士は結婚できませんし、嬉々として“嫁姑”問題をやるのも現実的な問題を無視しすぎている気がして。ファンはどう観ているんだろう? 明日菜子 私は当時LINEスタンプを買うくらい「おっさんずラブ」が好きだったんです。続編が放送されると知ったときは率直に「どんな感じなんだろう?」と気になりましたし、第1話は純粋に面白かった。というのも、ファンが観たかった続編を公式がやったことに何よりも“すごい”という気持ちがあって。ただ、(田中圭演じる)はるたんと(林遣都演じる)牧が“結婚”というワードを使うことには初回から引っかかりましたね。「おっさんずラブ」ラストではるたんが言った「俺と、結婚してください!」を汲んでいるのだと思いますが、あれから時代も進み、現実的な問題と乖離しているから「無邪気に楽しんでいいのかな?」という気持ちが拭えませんでした。 綿貫 完全にファンタジーとして観ればいいのかもしれないけど、「VIVANT」「バチェラー・ジャパン」とかのパロディもあるから、やっぱり“今”の話じゃん!と思ってしまう。「バチェラー・ジャパン」のパロディでディーン・フジオカさんが出てくるのはよかったけど(笑)。あと、第3話では“おむつパートナー”という言葉が出てきましたよね。現実的な要素として入れたんだろうけど、介護目的で結婚しようとしているように聞こえて、それはそれで危険……。 明日菜子 思えば「おっさんずラブ」って、今よりずっとLGBTQに対しての理解が進んでいない時代にあった作品ですよね。はるたんは男性が好きなのではなく、牧という人が好きなことが大前提で、BLにカテゴライズするか否かも意見が割れたような……。 綿貫 性的指向が絡む話なのに、単純に“(人類)愛”として風呂敷を広げて描くのも問題だと思うんです。2024年になった今の感覚で観ると「おっさんずラブ」に指摘しなければいけないことはある。 明日菜子 ファンは、時代に伴って変えなければいけないところを好きだったわけじゃないから、そこをアップデートしても魅力は失われないと思うんですよね……。でも、この豪華なキャストが誰も変わらずに戻ってきていることは本当にすごいです。 綿貫 続編のよさって、同じキャストがまた出てくれることですよね。はるたんと牧が楽しく生活している姿をただ見せてくれればそれでうれしいから、変な二次創作みたいな展開にしないで幸せな2人の生活を描いてほしいな。 ──レギュラーキャストに加えて、新キャストも登場します。 明日菜子 私は井浦新さんが和泉幸、田中さんが和泉の後輩・秋斗を演じる第4話の“警察学校編”に「すごいのぶっ込んできた!!」と思いました(笑)。こんなドリームキャスティングある!?と叫びたくなるような“春牧派”をも揺るがす画力でした。こういうのをもっと見せてくれ! ■ 「新空港占拠」で生まれた“トンチキの歪み”(明日菜子) ──そのほかの続編ドラマと言えば「新空港占拠」(日本テレビ系 毎週土曜22時放送)が放送中です。 明日菜子 「新空港占拠」の櫻井翔さんに前作よりも覚悟を感じます……! 展開は怒涛でお祭りに近いので、視聴者はちょっと面白がってるんだけど、(櫻井演じる)武蔵はマジなんです。ドラマ「君と世界が終わる日に」のように、劇場版まで展開するのでは!?くらいの気迫を感じて、むしろ今は応援したい気持ち。でも視聴者を笑わせようと狙っている予告編(※)にクスっとしちゃうのは悔しいです! ※編集部注:毎話の最後に放送される次回の予告編が、印象的な1シーンのみを数秒流すスタイルになっている ──本当に、ノンストップで武蔵にピンチが訪れますよね……。 明日菜子 やっぱり設定がぶっ飛んでるから、視聴者は最初「なんなんだよ」って感じで観始めるじゃないですか。登場人物はずっと真剣で、視聴者がちょっとおちゃらけてるところに、“トンチキの歪み”って生まれるんですよ。 綿貫 トンチキの歪み!(笑) 確かに「新空港占拠」は語りがいがありますよね。 ──「新空港占拠」の話をしているときは、なんだかみんな笑顔です(笑)。 明日菜子 私、笑顔なんだ(笑)。キャストが毎話明かされていくという仕掛け(※)も、エンタメとして成立してるから憎い! ただ、仮面をしているキャストが誰かを当てることはもはや“考察”ではないですよね。 ※編集部注:空港占拠事件を引き起こす武装集団を演じるキャストが、毎話数人ずつ明かされていく 綿貫 私はソニンさんが好きで、このドラマでは彼女の演技力が際立っていると思います。犯人を演じるキャスト誰なんだろう?というところに興味を持っていかれる番組の作りだと思うんだけど、(ソニン演じる)和泉さくらが本気でヤバい事件を解決しようとしてくれるから、ちゃんと事件を追うかって気持ちになる。 ■ 変わりたくても変われないお父さんの姿(明日菜子) ──ここからは、続編ではない新ドラマでお気に入りの作品を教えてください。 綿貫 「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」は東海テレビ・フジテレビ系ですね。この枠は、「その女、ジルバ」「おいハンサム!!」と特に1月クールに良質な作品が多いと思います。この作品も、コンセプトが時代にフィットしています。原田泰造さんはドラマ「生理のおじさんとその娘」でもそうでしたが、価値観をアップデートする役を演じるのが上手ですよね。 明日菜子 40~50代のおじさんが新しい価値観に触れる話は「不適切にもほどがある!」など、最近よくあるテーマだと思いますが、このドラマの特徴は現代の価値観について1から10まで丁寧に教えてくれるところ。(原田演じる)主人公・沖田誠にとって、なぜ新しい価値観が怖いのかというと、今まで生きてきた常識の中にないからなんですよね。この作品はそこをすごく理解しているのだと思います。たとえば第3話。銭湯にいるおじさんたちがいろんなパンツを穿いてるのを見て、誠が「その人の心の性別がどうとか、誰を好きになるかなんてことも誰にも迷惑は掛けない。だから好きにすればいい。そうだよ。おっさんのパンツがなんだっていいのと同じだ」と語るのですが、他人から教えてもらった知識を自分ごととして落とし込んで理解が進む描写には、説得力を感じました。 綿貫 (FANTASTICSの中島颯太演じる)大学生の五十嵐大地が、丁寧に新しい価値観を教えてくれるのは物語のミソですよね。ただ、世の中でマイノリティとされている人たちが常に“教えなきゃいけない”存在であるのは問題視したほうがいいと思う。本当はそんなことしなくても理解し合える世界であってほしいです。今後、誠が大地を助ける側に回っていくといいな。 明日菜子 「おっパン」は変わりたくても変われないお父さんの姿も繊細に描かれていて、その価値観でしか生きられない人の切なさを感じます。最終的には“世間と自分”よりも、“父と息子”の向き合い方の話になるんじゃないかな。体を触るような直接的なことだけがセクハラだと思っている人は世の中にいるので、そういう人に届いてほしいドラマです。 ■ 大河のスクラップ&ビルドが始まる!(明日菜子) ──NHKでは、大河ドラマ「光る君へ」もスタートしましたね。 綿貫 「光る君へ」は1年間、楽しく観られそうです。大河ドラマって固定ファンも多いし、作り手は慎重になるはず。そんな中で、多くの女性スタッフが参加し、女性ヒロインの物語を作るということ自体が、日本のテレビ史にとって重要なこと。これまで、大河ドラマは“戦のシーンがないとヒットしない”という声もあった中で、大石静さんが恋愛や権力闘争を軸に物語を作るという挑戦が楽しみです。今までの大河ドラマとは違うけど、ちゃんとドラマ好きが1年間食いつける要素はあると思います。すでに第2回で、(吉高由里子演じるのちの紫式部・)まひろと(柄本佑演じる)藤原道長が急接近していたし。 明日菜子 観る前はすっっごくいい作品になるかダメダメになるかのどっちかだと思っていましたが、前者でうれしい! 平安時代って史料もそこまで残ってなさそうだけど、大石さんには“1年書き切る”筆圧の強さを感じますね。大石静脚本と言えば、男性陣の萌えキャラ造形がすごいんです。今回も、玉置玲央から始まり、本郷奏多、プレイボーイの町田啓太に野生みあふれる毎熊克哉!! 魅力的なキャラクターばかりです。 綿貫 マンガ「あさきゆめみし」ファンも多いと思うけど、ちゃんと源氏物語のモチーフを盛り込んでいるのもいいですよね。それがあるから「だからこの人(まひろ)はのちに、源氏物語を書けたんだ」って思わせてくれる。それに有識者が史実をドラマに関連して投稿してくれているので、学びながら観るコンテンツとしても楽しいですね。あと(まひろが参加する)貴族の歌会シーンで感じましたが、まひろを現代的な感覚を持つキャラクターにしているのがすごい。現代の視聴者がまひろに好感を持てるように(脚本を)書いていると思うんです。 明日菜子 改めて大河ドラマの脚本家の流れを見ると、(「鎌倉殿の13人」の)三谷幸喜さんから(「どうする家康」の)古沢良太さんに託すの、すごく納得しませんか? その次を任せられる人なんて大石さんクラスしかいないですよ……! 大河のスクラップ&ビルドが始まる! 綿貫 近年の流れ、とても挑戦的だなと思います。このままぜひとも、女子教育の先駆者・津田梅子の大河ドラマを作ってほしいです! ■ TBSの西田敏行に感謝(綿貫) ──大河ドラマと同じく日曜は、日曜劇場「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」が放送中です。 綿貫 家族で観られる日曜劇場が戻ってきたなっていう感じがします。もともと日曜劇場って「オヤジぃ。」「末っ子長男姉三人」みたいなファミリードラマが強かったんですよ。2010年代に入ると「半沢直樹」とか大企業モノが増えて、自分は避けていたんですけど、最近は作風が戻ってきた気がします。今回は(芦田)愛菜ちゃんが本当に最高。 明日菜子 もう社会人を演じるんだ……!と思いました。 綿貫 そうですよね。でもそれで言うと、(西島秀俊演じる)俊平と(芦田演じる)響の親子関係には、もうちょっと距離が欲しい。親子でバチバチにぶつかってる感じ、高校生?と思ってしまった。親子は別人格であり、それぞれが自分の領域を持っているんだから、大人同士の関係なら最終的に「家族愛が正義」みたいな着地じゃなくてもいい気がする。 明日菜子 SNSでも「娘が冷たすぎる」というコメントはよく見かけますね。キャストがすごくいいし、大島里美さんによるオリジナルのセリフが、軽やかだけどドラマチックでグッと来ます。でも、廃団寸前のオーケストラを立て直すという点が、「リバーサルオーケストラ」(※)に似てるんですよね。 ※編集部注:2023年1月期に日本テレビ系で放送されたドラマ。門脇麦、田中圭らが出演した ──「リバーサルオーケストラ」も好きでしたか? 明日菜子 好きでした! 音楽が持つ力のすごさは「リバーサルオーケストラ」で知ったので、オーケストラドラマとしては感動が薄かったかも。でも第3話で“音楽に愛された親子2人の愛憎劇”という要素を見つけて、俄然興味が湧きました。歳上の人が若い才能に嫉妬する展開はよくあると思うんですけど、「さよならマエストロ」は逆なんですよね。響が「時間が掛かってもずっと見つけようとしてるんだよ! 違う生き方を。なのになんで……なんで帰ってきたの?」と俊平に言った真相が知りたい!! 綿貫 市民楽団を立て直す話は既視感がありすぎて、自分の中では意識的にスルーしてる(笑)。家族の話や楽団員1人ひとりの成長に注力して見守りたいですね。 明日菜子 あと「さよならマエストロ」と言えば、西田敏行さんの存在が物語の格をグッと上げていませんか? 綿貫 本当にそう。TBSの西田敏行には感謝しかない! ■ マジでこの子、どうしたらいいの?(綿貫) ──今期の月9枠「君が心をくれたから」はいかがでしょうか? 綿貫 いやあ……もう、(永野芽郁演じる)雨が五感を失っていくという設定(※)がつらすぎて……。これから視覚や聴覚も失っていくだろうし、“今後は介護が必要になる”というシーンもあって、ハッとしました。マジでこの子、どうしたらいいの? 今から取引やめるって無理? ここまで自己犠牲のヒロイン、今の時代にどうなんだろう。昔の携帯小説を彷彿とさせる悲しいストーリー。 ※編集部注:主人公の逢原雨は、かつてただ一人心を通わせた朝野太陽と高校時代以来の再会を果たすが、太陽が事故に遭ってしまう。悲しみに暮れる雨の前に、“あの世からの案内人”が現れ、「雨の五感を差し出す代わりに、太陽の命を助ける」という“奇跡”を提案。雨は太陽のためにその“奇跡”を受け入れる。 明日菜子 しかも、五感を失うことも“奇跡”のことも(山田裕貴演じる)太陽には伏せるつもりなんですよね。 綿貫 そうそう。とにかく雨には、自分の人生を生きてほしい。パティシエという夢を追っかけてほしい。でもこのままでは五感がなくなって、いろんなことができなくなるし、いったいどう救われるの? ──かなりつらい展開ですよね。 明日菜子 私けっこう、ビジュアルを見たときは「あ、また月9でラブストーリーしてくれるんだ!」とすごく楽しみで。今は“(あの世からの案内人・日下役の)斎藤工がホストの、縛りきつすぎる恋愛リアリティショー”だと思って観てる。 綿貫 (笑)。だったら明るい新メンバー入れてほしい! お願い! 明日菜子 最初、雨は太陽くんを助けるために「なんでもします」って言ってたのに、感覚を失って1話ごとに後悔を重ねるんですよ……悲しすぎる。 綿貫 もう本当に五感を失っていくんだったら、期間限定でいいから太陽と幸せな恋愛をしてほしい。余命が決まっていて泣ける、感動するっていう方向性の作品もあるから。今の雨はいい思い出も作れず……! 明日菜子 逆に日下が「がんばったから五感戻してあげるよ」って言ったらなんで?と思いますしね。今後どうなるかわからなすぎて、ある意味かなりの注目作! 綿貫 うん、着地が一番気になる! ウルトラCだけど、雨が障がい者権利を訴える社会福祉活動家として、現状の弱者が生きづらい世の中を変えていくという可能性もまだある……! ■ ずっと見たかった高杉真宙がここにいる(明日菜子) ──「となりのナースエイド」(日本テレビ系 毎週水曜22時放送)の感想も伺いたいです。 明日菜子 私は(天才医師・竜崎大河役の)高杉真宙のために観ています。ずっと見たかった高杉真宙がここにいる。 綿貫 「わたしのお嫁くん」のときより好き? 明日菜子 はい、ちょっとクール系のほうが好みですね。「光る君へ」でもそうですけど、高杉さんはかわいい男の子やクセが強い役を演じることが多いので、ストレートにカッコいい役がもっと見たい!! 綿貫 なるほど。なんというか……このドラマは水曜22時っぽくないんですよ。 明日菜子 わかりますー。土曜22時っぽい。 ──その感覚がわかるのはドラマウォッチャーのおニ人だけだと思います!(笑) 明日菜子 (笑) あ、あとそのほかで言うと「闇バイト家族」(テレビ東京系 毎週金曜24時12分放送)が面白いです! 最近、闇バイトってよく聞くワードじゃないですか。でもこのドラマを観てから、あの家族が必死になって餃子屋を回してる光景が出てきちゃう!(※)(指示役の男を演じる)吹越満さんがこの茶番劇を締めてくれて最高。 ※編集部注:鈴鹿央士演じる田中颯斗ら“闇バイト家族”は、特殊詐欺グループの金を奪うため、アジトの向かいに餃子屋をオープンする 綿貫 面白いですよね! リアタイで観るのにちょうどいいドラマって今期は少ないんですけど、これは金曜の深夜にやってるし、めちゃくちゃ観やすい。 ■ キャストのファンが求めているものを、うまく作ってる(綿貫) 明日菜子 「闇バイト家族」とか「恋する警護24時」(テレビ朝日系 毎週土曜23時放送)くらい、軽い気持ちで楽しめる作品はいいですよね。「恋する警護24時」は脚本が金子ありささんで、セオリーがちゃんとしているし。 綿貫 そうそう。「恋する警護24時」みたいなボディガードとの恋愛モノって昔からありますよね。みんなストーリーの法則はわかって観てるし、キャストのファンが求めているものを、うまく作っています。 ──30分のドラマって観やすいですよね。 綿貫 ただ、その分増えている本数が問題ですよね。 明日菜子 私は前編の対象作品だけで、16本観てます……。 綿貫 テレビでできるだけリアタイ視聴したいけど、今はドラマの放送枠が多すぎる。もう配信ありきだから、“この曜日にこれを観る必要”ってのはないんでしょうね。 明日菜子 リアタイは体力使いますからね。火曜日とかヤバいですよ。21時に「マルス-ゼロの革命-」から始まって、22時に「正直不動産2」と「Eye Love You」、23時からは「リビングの松永さん」……ヒィ! ──ドラマウォッチャーならではの悩みですね(笑)。後編も楽しみにしています! 【後編は2月中に公開予定!】 ※記事初出時より、一部表現を変更しました ■ 明日菜子(アスナコ)プロフィール 2017年に日本のドラマの楽しさに目覚め、毎クール20本以上のドラマを鑑賞しているドラマウォッチャー。「文春オンライン」などに寄稿している。冬に観たいドラマは「5→9~私に恋したお坊さん~」。 ■ 綿貫大介(ワタヌキダイスケ)プロフィール エンタメを中心としたカルチャー分野で活動する編集者・ライター・テレビっ子。今季は「TVerプラス」で「不適切にもほどがある!」のレビューコラムを連載中。冬に観たいドラマは「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」。