大阪地検元トップの性暴力事件、郷原弁護士「法務省は事情を把握していた可能性がある」 第三者調査を訴え
●在任中に森友問題の不起訴に対応「公正な処分だったのか」
今回の事件が注目されているのは他にも要因がある。 北川氏は2018年2月に大阪地検の検事正に着任し2019年11月に退官したが、その在任中に学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題に対応した。 この問題では国税庁長官だった佐川宣寿氏が虚偽公文書作成などの疑いで告発されたが、大阪地検は2018年5月に不起訴処分を下した。その後、検察審査会が「不起訴不当」の議決を出したが、大阪地検は2019年8月に佐川氏を再び不起訴処分としていた。 いずれの不起訴処分も北川氏が検事正だった時期と重なる。検審議決後の不起訴処分は、性的暴行事件の後だ。こうした経緯に関して、郷原弁護士は次のような見方を示す。 「不起訴不当の検審議決を受けての刑事処分では、一部には起訴せざるを得ないと思えるものもありましたが、すべて再度不起訴処分になりました。性的暴行事件を起こした後の北川氏の被害者への言動からすると、地検の処分の最終決裁者の検事正として職責が果たせる状況だったとは思えません。当時の大阪地検の不起訴が公正な処分だったと我々が信じるのは無理でしょう」
●「法務大臣の指揮権で調査を」
さらに、検察官がある事件を起訴するかどうか決められる強大な権限を独占していることを踏まえて、郷原弁護士はこう強調した。 「性加害事件を起こした人が大阪地検の検事正として様々な事件の決裁に関わっていた状況を考えると、その在任期間中に大阪地検が扱い、検事正が決裁した事件の処分がどうして適正だったと言えるのか、深刻な疑問が生じます。 これまでの検察の対応をみていると自浄作用が働くとは思えません。法務大臣が、北川氏の問題、検察官の不当な取調べの問題など、今起きている検察をめぐる問題を、組織の問題として徹底調査を行うよう指示すべきです。それは、個別の刑事事件に関するものではないので、検察庁法14条但し書の「個別的指揮権」ではなく、同法14条本文の一般的指揮権によって行うことが可能です」