「#ひやごんの奇跡」に「燃えよヒヤゴン」 FC琉球×カヤックの新機軸 面白ポスター誕生の舞台裏 沖縄
沖縄を拠点とするサッカーJ3のFC琉球OKINAWA。チーム創設21年目の今年、経営体制に大きな変化があった。運営会社である琉球フットボールクラブの筆頭株主として「面白法人カヤック」として知られるカヤック(神奈川県鎌倉市・柳澤大輔CEO)が加わった。カヤックは事業内容に「日本的面白コンテンツ事業」を掲げ、「うんこミュージアム」の企画・制作などを展開。既成概念にとらわれない斬新な取り組みを仕掛けることで知られている。同社が2024年3月に筆頭株主となって以降、FC琉球は広報戦略などで新機軸を次々と打ち出している。その中でも、SNSを中心に話題になったのが4~5月のルヴァンカップの際の「面白さ」あふれるポスターだ。 【写真】計8種のポスターを見る
格上のJ1ガンバ大阪との2回戦、セレッソ大阪との3回戦に向けて作製された計8種類のポスター。J1チームが沖縄で試合をするという滅多にない出来事を「黒船来港」に重ねた「青黒船襲来」や、昭和の人気グループ「ドリフターズ」を彷彿とさせるような「ガンバだヨ!県民集合」のポスターはどれも思わず見入ってしまうデザインだ。 琉球フットボールクラブ社長を務めるカヤックCEOの柳澤氏は「筆頭株主となり、『うむさん(沖縄の言葉で「面白い」の意味)なチームにする』をテーマに掲げた。それを具体化した一歩だった」とポスターに込めた意図を語る。 ルヴァン杯は今年からJ1のみならずJ3までの全チームが参加する形式となった。そのためJ3が格上のJ1を破るチャンスもある「下克上システム」としても注目された。そこに着目し打ち出されたのが「#ひやごんの奇跡」の一枚だ。「ドーハの悲劇」(1993年)、「マイアミの奇跡」(1996年)など過去のサッカー日本代表の歴史的な試合につらねる形で4月24日、ホームである沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで行われるガンバ戦を位置づけた。
しかし、Jリーグ優勝経験もある格上との試合前に勝利を前提とした「奇跡」という文言を、早々と宣言することに迷いはなかったのか。琉球フットボールクラブ執行役員でうむさん担当の綿引啓太氏には「負けても失うものはない」と迷いはなかった。「J1のチームが沖縄で試合をすることはめったにない。お祭りとして徹底的に盛り上げよう。そして『勝ちたい』という思いを前面に出そう」。そう決めた。結果は2-1で琉球勝利という大金星。「あの瞬間は鳥肌が立った。『#ひやごんの奇跡』という言葉は私たちの想定以上にサポーターの皆さんがSNS上で広げてくれた。言葉の力を感じた出来事だった」と振り返った。 ガンバ戦の勝利を受け勢いに乗ったFC琉球。面白ポスター作戦も一層熱を増した。次なるセレッソ大阪戦に向けても4作品を発表。中でも世界的スターの故ブルース・リーのカンフー映画「燃えよドラゴン」をヒントに生み出された一枚「燃えよヒヤゴン」は、カヤックの鎌倉本社のサッカー好きの社員たちから生まれたアイデアだった。当日の試合には、「#ひやごんの奇跡」の再現を願った多くのサポーターが詰めかけ、来場者数は平日で過去最多となる7034人を記録した。